■トランプが最下位で1位は…!?
2025年1月20日、アメリカでは新しい大統領が就任する。47代目となるのは、返り咲きを果たしたドナルド・トランプだ。
しかし、前回のトランプ政権が誕生した翌年、2018年2月に発表された「偉大な大統領」ランキングでは、当時現職のトランプは最下位。トップだったのは第16代大統領エイブラハム・リンカーンである。
これまでの調査でも、リンカーンの人気はおしなべて高い。そんなリンカーンの偉業といえば、世界史の教科書にも載る「奴隷解放宣言」だ。
アメリカで17世紀半ばごろから奴隷制度が存在し、19世紀になると制度に反対する北部と賛成する南部が対立していた。そして、反対派であったリンカーンが1861年に大統領に就任すると、制度撤廃を恐れたテキサスなどの南部7州が同年2月に合衆国離脱を宣言。いわゆる「南北戦争」が勃発した。
この戦争の真っ只中、1863年1月1日に「奴隷解放宣言」は発布され、南部の奴隷制度は公式に否定される。さらに、終戦後の1865年1月31日の憲法第13修正提出により、アメリカ全土で奴隷制度は事実上撤廃されたのである。
リンカーンは同年4月14日に暗殺されるが、奴隷解放と南北戦争の勝利、民主主義におけるリーダーシップを評価され、現在でも初代大統領のワシントン、第二次世界大戦時のF・ルーズベルトと肩を並べる人気を維持しているのだ。
■奴隷解放は政治的判断だった?
リンカーンが奴隷解放を決断したのは「奴隷制度が道徳的な悪行であり、いずれ奴隷は解放されるべき」と考えていたというのが通説だ。しかし現在では、政治上の都合も注目されている。
リンカーンたちがもっとも恐れたのは、アメリカ弱体化を狙う欧州各国による介入だった。南北内戦が長引いて英仏の干渉を許せば、南部が独立し「二つのアメリカ」になりかねない。それを防ぐ切り札が奴隷解放宣言だった。
つまり、奴隷解放を戦争の大義名分とし、北部の団結を強めると同時に、国際世論を味方につけることが「宣言」の狙いだったのだ。また、解放奴隷の脱走で、南部経済の弱体化と北部流入による北軍増強という一石二鳥の目論見もあった。