アラフィフ男性のあいだでタイ移住が静かなブームだという。その動機のひとつが情の深いタイの女性たち。彼女たちの魅力にコロッと参ってしまい、恋愛関係に至る日本人男性もいるとか。ただし、なかにはタイ人女性にまつわる怪異に遭遇した方も……今回はそんな現地在住、日本人男性の体験談。

 

■念願のバンコク生活が始まる

念願だったタイへの移住生活を満喫していたタケダさんだったが……

 これは、かつてバンコクで暮らていたタケダさんから、酒の席で聞かせてもらった話だ。

 

 タケダさんは50代の独身男性。30年ほど前に初めてタイを訪れた際、タイ人女性の人懐っこさや愛嬌の良さに強く惹かれたという。

 

 当時、日本でフリーランスとして活躍していたタケダさん。「いつかタイに住みたい」と漠然とした夢を抱くようになり、ついには念願だったバンコクでの生活を始めることとなった。

 

 タイに移住してから約3ヶ月が経ち、現地での生活にもすっかり慣れた頃、タケダさんは週末になるとスクンビット周辺にあるバービア(オープンタイプのバー)を巡るのが、ささやかな楽しみとなっていた。

 

 

バービアで出会った女性アン

 

バービア
バービアは熟年日本人男性とタイ人女性の出会いの場ともなっているようだ。

 ある夜、偶然入ったバービアで、アンという20代のタイ人女性に出会った。小柄で笑顔が愛らしく、少し日本語が話せた。一杯ごちそうし、他愛もない話で盛り上がり、帰り際にはLINEの交換を持ちかけられた。

 

「どこに住んでるの? いつでも連絡してね」

 

 そう言って彼女は笑った。

 

 最初は軽い気持ちだった。週に一、二度LINEが来る程度で、たわいないやりとりが続いていた。だが、ある日彼女が「会いたい」としつこく言うので、酔った勢いも手伝って一度だけ自宅に招いてしまった。

 

 タケダさんが暮らすコンドミニアムで酒を飲み、体を重ねて、そのまま彼女は帰っていった。タケダさんはそれで終わりのつもりだった。だが、アンは違った。

 

 数日後、仕事から帰宅すると、部屋の電気がすでに点いていた。ドアを開けると、そこにはアンがソファに座っていた。手には缶ビール、テレビをつけて笑っている。

 

 

■人懐っこさも度が過ぎて

 

バンコクの夜街でよくある男女関係かと思ったが……

 

「びっくりした? 管理人さんに言ったら開けてくれたよ」

 

 この時点で、タケダさんは背中に冷たい汗を感じたという。何事もなかったように振る舞う彼女に恐怖を覚えながらも、「こんなことはやめてくれ」とは言い出せなかった。

 

 その後も、アンは何かと理由をつけて訪ねてくるようになった。仕事を終えて帰ると、彼女の荷物が増えていたり、冷蔵庫に見覚えのない惣菜が入っていた。問いただすと、フェーン(恋人)ができて嬉しいから、サプライズしたいの」と言った。

 

 ある日、タケダさんとアンが一緒にショッピングに出かけたところ、アンも付いてくることになった。ショッピングモールのアクセサリーショップを見て「指輪ほしいな〜」とふざけた口調で言うアン。

 

 冗談半分で小さな指輪を買ってあげたところ、その晩から彼女のLINEにはハートのスタンプが頻繁に飛んでくるようになった。

 

「プロポーズしてくれて、ありがとう」

「うちの親に、いつ挨拶にくる?」

 

 タケダさんは曖昧に笑ってごまかしながら返信していたが、アンはどんどん思い込みを強めていった。連絡を無視すると、着信は深夜を問わず続いた。