イカゲーム』で一気に知名度を上げたベテラン俳優イ・ジョンジェの魅力を探るコラムのシリーズ2回目は、彼が20代後半のときの主演映画『純愛譜』(2000年)を取り上げる。

■冴えない公務員が意外なハマり役の若きイ・ジョンジェ

『純愛譜』は早過ぎた韓日合作映画である。韓日共催のW杯(2002年)を控えてはいたものの、その後の韓流など誰も予想していなかった。

 物語はソウル北村の町役場に努める無気力な青年ウイン(イ・ジョンジェ)と、東京に住む自殺願望のある浪人生あや(橘実里)によって交互に展開される。

 ウインはちょっと足りないのではと思われるくらいぼんやりした男だ。仕事では失敗ばかり。家では缶ビール片手に虚ろに外を眺めたり、日本のエロサイトを見ながら自慰行為に及んだりする。役場の製パン教室で助手として働いている女性ミアを好きになり、やんわり迫ったり、ストーカーまがいの行為に及んだりするが、まったく相手にされない。

 それまでのクールな役柄とのあまりの違いに、公開当時は驚いたが、今観るとハマり役である。そもそもギラギラとした色男ではないし、整った美男でもない。筋肉も今ほどではなさそうだ。当時のインタビュー記事では、「自分の素もこんなものかもしれない」とイ・ジョンジエが言っていたのを覚えている。