■七変化するアン・ヒョソプとあたふたするキム・セジョン、新しいスタイルのラブコメ
ストーリーを整理してみよう。
大手食品会社の研究員シン・ハリは、友人のチン・ヨンソ(ソル・イナ)の身代わりで見合いを引き受ける。相手は、同じ会社の社長のカン・テムだ。彼は創業者で祖父のカン・ダグ(イ・ドクファ)会長のしつこい見合い要請から逃れたくて仕方がなかった。結局、紆余曲折があってシン・ハリとカン・テムは会長の目をごまかすために偽装恋愛をせざるをえなくなる。
しかし、やがてカン・テムは「偽装」から「真実」の恋愛に目覚め、シン・ハリに愛の告白を敢行する。驚いたシン・ハリは身分違いを自覚して必死に断ろうとするのだが、カン・テムの本気モードに圧倒されていく……。
思えば、カン・テムのカリスマ性はシン・ハリに惚れ込めば惚れ込むほど崩れていく。そのあたりの七変化をアン・ヒョソプが巧みに演じ分けていた。
一方のシン・ハリはドラマ冒頭から一貫して「あたふたする性格」だった。最初は、自分の身分がカン・テムにバレる前にひたすら社内で隠れる「逃げる女」だったし、偽装恋愛をする間は身分不相応の「勘違い女」になりきり、カン・テムに告白されてからは自分の感情を抑える「耐える女」に扮していた。
キム・セジョンの演技の振り幅がとても大きかったが、どんな場面でも彼女は視聴者を大いに楽しませてくれた。
かくして、『社内お見合い』はヒロインの突発的な動きで笑いを取る新しいスタイルのラブコメとなった。
さらにストーリーを面白く作り出しているのが、どこからボールが飛んでくるかがわからない予測不能の展開であり、アン・ヒョソプのイケメンすぎる執着男ぶりであり、キム・セジョンの突き抜けていくような明るいキャラである。
しかも、無条件で話の筋をとことん楽しめる。そこが『社内お見合い』の最大の持ち味であるに違いない。