■『ペーパー・ハウス・コリア」で聞こえてくる北朝鮮訛り

 トーキョーが列車でソウルへ向かう車中、窓外にJEA(南北の共同経済区域)の発展ぶりを見て興奮した北朝鮮の人々が、「我が北朝鮮もこんなふうに変わるかな」「たくさん稼いで故郷に大きな家を建てたいよ」などと話す声が聞こえる。

現状、

新義州駅~平壌駅を走っている北朝鮮の列車。この路線のかつての名「京義線」は京城(現・ソウル)と新義州を結んでいたことから。ドラマではこの列車がトーキョー(チョン・ジョンソ)を乗せて開城からさらに南下し、ソウルに到達していた

現実のJSA(南北の共同警備区域)が、ドラマではJEA(南北の共同経済区域)に進化していた。写真はJSAにある京義線都羅南北出入事務所

 韓国語を勉強している日本の人ならわかると思うが、明らかに南の言葉とはアクセントが異なっている。映画『パラサイト 半地下の家族』の家政婦(イ・ジョンウン)が真似た平壌のアナウンサー口調とは違う、土の匂いのする語感だ。東京の人が東北弁を聞いたときの印象に近いかもしれない。

 ソン・ガンホイ・ビョンホンの主演映画『JSA』(2000年)以降、北朝鮮の人々が登場する映画やドラマが増え、多くの俳優が北の要人や市井の人々を演じた。世界中で大ヒットした『愛の不時着』(2020年)では、ヒョンビン演じるリ大尉をはじめ、軍人や軍舎宅村の女性たちなど、北朝鮮の人々がたくさん登場した。

 過去、北朝鮮人を演じた多くの俳優のなかで、私がもっとも上手いと思ったのは、ホン・サンス監督の『アバンチュールはパリで』(2008年)で、パリ在住の北朝鮮留学生を演じたイ・ソンギュンだ。

 留学生の飲み会に北朝鮮の人々が同席していることに困惑する主人公(キム・ヨンホ)と微妙な空気になったときや、主人公と街なかで出くわし、ぎこちない雰囲気の中でお茶を飲んだりするシーンの演技と北朝鮮訛りは大変説得力があった。

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