どういうわけか、たまに猛然と食べたくなる麺がある。
私の場合は、ピビムミョンなどの辛い麺がそれだ。いや、「どういうわけか」ではない。理由ははっきりしている。むしゃくしゃしたときに食べたくなるのだ。辛さ(痛覚)によってストレスを発散するとでもいうのだろうか。私に限らず、そんな韓国人は少なくない。
■チャジャンミョン(韓国式ジャージャー麺)
韓国人が猛然と食べたくなるのが辛い麺とは限らない。映画やドラマによく登場する韓国式中華料理、チャジャンミョンは甘い食べものだ。登場人物が黒いソースを嬉々として麺にからめ、夢中で食べているシーンはよく見られる。
その甘味のせいか、1960~1970年代は脂っこいものに飢えていたせいか、「テストでいい点を取ったら出前してあげる」と母に言われて食べた記憶のせいか、一生食べてはいけないと言われたら、かなり困る食べ物といえそうだ。
そんな韓国人のチャジャンミョン愛を誇張表現した映画が、『彼とわたしの漂流日記』(2009年)だ。人生を半分捨ててホームレスのように暮らす主人公(チョン・ジェヨン)と浮世をつなぎとめていたのがまさにチャジャンミョンだった。この映画はPrime Videoでも視聴できるので、ぜひ観てほしい。