コギククス済州式とんこつラーメン

ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』の主人公ウ・ヨンウ(パク・ウンビン)の上司ミョンソク(カン・ギヨン)は、13~14話の済州出張の際、コギククスという麺にこだわっていた。

 コギククスとは、とんこつラーメンに似たもので、豚肉片がたっぷりのった済州の名物だ。「コクはあるが、豚の臭みはまったくない飽きのこないスープ」というミョンソクのコギククス評は興味深かった。このドラマで初めてコギククスを知った日本の人は食べてみたくなっただろう。

済州で食べたコギククス。コギ(肉)が冠されているだけに豚肉はかならず入っているが、その他の具材は店によってちがう

 もっとも、このコギククスを日本の人たちに強くおすすめできるかというと、正直微妙だ。九州発のとんこつラーメン(博多ラーメン)が80年代に全国に普及し、今ではかなり多様化している麺やスープを日常的に味わっている人たちに、コギククスは大味に感じられるのではないかと思う。

 もう少し韓国らしさが出せればおもしろいのだが、済州で7、8種のコギククスを食べた私には今のところ、とんこつラーメンの亜種としか思えない。『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』のハンバダチームが大騒ぎして食べたようなコギククスに早く出合いたいものだ。

サルククス(ベトナム式ライスヌードル)

「猛然と食べたくなる」感じからは遠いが、今年、大阪アジアン映画祭で上映された映画『おひとりさま族』で、人との関わりを避けて生きるコールセンター勤務の主人公(コン・スンヨン、TWICEのジョンヨンの姉)が、ランチタイムに毎日のように食べていたのがサルククス(米粉麺=フォー)だ。

 劇中、サルククスは何度か俯瞰で撮られていたため、その全容がよくわかった。米粉の麺は主人公の肌のように白く、他人を寄せ付けない彼女の冷徹さを象徴しているようだ。

 しかし、麺は淡白だが、トッピングはなかなかヘビーだ。日本で言うチャーシューのようなものが数片、牛テールかトガニ(牛の膝軟骨)のようなものも数片、さらにユッケジャンに入っているような牛スネ肉らしきものも浮かんでいた。

 米粉麺とたっぷりの肉片のアンビバレント感が、主人公の心の表と裏を表しているようで興味深い。この映画では同じ店のサルククスが3度も出てくるので、なんらかの意味があるシーンであることは明らかだ。

ソウル仁寺洞のベトナム料理店で食べたサルククス

 韓国人も日本人同様、主食は米だが、食のアクセントとして活躍してくれるのはやはり麺だ。今後も映画やドラマでさまざまな役割を果たしそうな麺に注目していきたい。