韓国映画には強いこだわりがあり、これまで著書や連載コラムでたびたび取り上げてきたが、2022年は縁あって、年明けから韓国ドラマについて書く機会を得た。『イカゲーム』が世界的にヒットした2021年もすごかったが、今年はそれに負けない当たり年だった。気が付けば一年間、常にドラマを楽しむことができたと言ってよい。

 そこで今回は、今年、筆者が夢中になったドラマ7作を振り返ってみる。年末年始に観るドラマ選びの参考にしてほしい。(※一部、2021年作品も含まれます)

●社会派ドラマ『D.P. ─脱走兵追跡官─』(全6話)※2021年作品

 我が国、韓国では多くの男子が二十歳前後に軍隊に入る。国民の義務なので健康上の特別な理由がない限り逃れることはできない。敵とはいえ人を殺傷する訓練をする軍隊など本当はないほうがいいという意見がある一方で、韓国男子は兵役を経験して初めて一人前の大人になるという見方もある。

『D.P. ─脱走兵追跡官─』はいじめなどが理由で軍部隊を脱走した兵士をつかまえるために選抜された追跡官の物語だ。

 主要人物は新米追跡官ジュノチョン・ヘイン)と先輩追跡官ホヨル(ク・ギョファン)。追跡官の上長役に映画『悪いやつら』や『ソウル・バイブス』のキム・ソンギュン。同じ部隊の上長役に『私の解放日誌』のソン・ソック。兵士役に『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』の腹黒策士チュ・ジョンヒョク。ジュノの父親役に『冬のソナタ』のキム次長役で知られるクォン・ヘヒョ。部隊の大将役に『ナルコの神』でハ・ジョンウエイ商売の相棒を演じたヒョン・ボンシク。個性派俳優がずらり揃っている。

 もっとも光って見えたのはク・ギョファンが演じたホヨルだ。『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』9話の笛吹き男(子供解放軍・総司令官)にも通じるエキセントリックなキャラクターをみごとに演じ切り、「この人、ひょっとしてソル・ギョングソン・ガンホ級のスターになるのでは?」と思ったりもした。代わりになる俳優が思いつかない。それほど存在感がある。2023年にシーズン2が配信予定とのことなので、引き続きク・ギョファンの演技に注目したい。

3話で追跡官の先輩後輩(ク・ギョファン、チョン・ヘイン)が釜山に出張したとき、旅行気分で乗った観光バス
徴兵制のある我が国では街のいたるところで軍人の姿を見かける。写真はソウル東部の東ソウル総合ターミナルでバスに並ぶ軍人たち