出世競争が熾烈な銀行の支店で、たまたま社員となった男女の間に純粋な愛情は育つのだろうか。それとも、人は自分が抱えている環境の中で打算的な愛を自ら選択していくものなのか。

 そうしたテーマを自ら感じ取りながら楽しみに見ているのが、韓国ドラマ最新作『愛と、利と』だ。韓国JTBCで放送中。日本でもNetflixで同時配信されている。

■銀行の支店を舞台にした、4人の男女の複雑なラブロマンス『愛と、利と』

『愛と、利と』の舞台となるのはKCU銀行のソウル市内の支店。わりと癖があるキャラが登場人物として次々に出てくる。そんな職場は殺伐としている。

 窓口係として仕事をテキパキこなすのが、ムン・ガヨン(『女神降臨』)が演じるアン・スヨンだ。「女神」と称される美貌を誇るが、表情にはどこか暗さがある。学歴が高くないので契約社員になっており、能力があるのに正当に評価されていない。そのことが彼女のもどかしさの原因になっているが、それ以上に陰を落としているのが父親との不和だ。

 スヨンには愛する弟がいたのだが、若くして急死している。そのことでスヨンは父親を厳しく非難しており、彼女は弟の早世を父親のせいだと思い込んでいる。

 そんなスヨンに好意を寄せるのが、支店の中でも一番誠実な人柄を見せる係長のハ・サンス(ユ・ヨンソク/『浪漫ドクター キム・サブ』『賢い医師生活』『ナルコの神』)である。彼は顔見知りの高齢者が口座の残高不足でお金を引き出せないときにこっそり自分で入金してあげている。こんなことを繰り返していたらストレスがたまって仕方がないだろうと思われるが、休日は趣味のアイスホッケーに興じて心のバランスを保っている。