朝鮮戦争によって世界最貧国となり、南北分断によって東アジアの孤島のようになった韓国において、釜山(プサン)はソウルに至る鉄道や海外と結ばれた航路をもつ物流の要として、韓国最大の輸出産業基地となった。歴史に翻弄されながらも経済活動が盛んだったため、現在は韓国一の港湾都市、韓国第二の都市という地位にある。
激変する時代を常に生活圏で経験してきた釜山の人々には、情緒より現実、政治や文化より経済と娯楽、感傷より打算、名分より実益を優先する傾向があると言われてきた。
言い換えれば、釜山人は建前より本音重視なのである。釜山=大阪説を唱える人の多くが、このことを根拠にしているようだ。
■映画『弁護人』でイ・ジョンウンが演じて見せた釜山人の素顔
ソン・ガンホの主演映画『弁護人』(2013年)で、イ・ジョンウンが演じた釜山訛りの主婦を思い出してほしい。
主婦(イ・ジョンウン)は自宅で友人と談笑しているとき、突然やってきた弁護士(ソン・ガンホ)を最初はいぶかしんでいた。しかし、手土産のパイナップルで警戒心を解く。
さらに、弁護士がこの家を高値で買いたいと言い出すと態度が一変し、友人を帰してしまう。「ジュースでもいかが?」と猫なで声で言うが、弁護士に「化粧の続きをなさったら?」と言われて慌てふためく。儲け話に目がくらみ、片方の目しかメークしていなかったことも忘れていたのだ。
この現金さに、私は釜山人らしさを感じる。標準語だとちょっと嫌味だが、これが愛嬌のある釜山弁なので笑ってしまう。