■北鎌倉駅で下車、円覚寺から鶴岡八幡宮へ

 北鎌倉駅では助っ人ガイドが待っていてくれた。翻訳者兼ライターの光瀬憲子だ。一緒に作った台湾関連書籍は『台湾一周!! 途中下車、美味しい旅』など10冊を超えている。彼女は横浜生まれ、鎌倉育ちなので、この辺りは庭のようなものだ。

 北鎌倉駅の目の前にある円覚寺は、新緑と総門・山門・仏殿のコントラストがみごとだった。この齢になると寺社仏閣巡りは豊かな時間だ。韓国では江原道済州でテンプルステイを3回経験しているが、日本でも宿坊体験がしてみたくなった。

北鎌倉駅前、円覚寺の仏殿

 前日、大塚駅前の天祖神社を見学したが、韓国の人を神社に案内するときは注意が必要だ。今の50代、60代の韓国の人が植民地時代を直接経験しているわけではないのだが、神社、とくに鳥居は日本植民地支配を象徴するビジュアルだからだ。神社に入るときは、「韓国の方にとっては微妙な場所かもしれませんが……」のようにひとこと添えると感じがよいだろう。もちろん、安易に参拝をすすめることも避けるのが無難である。

 一方、寺に対しては韓国の人は抵抗を感じない。円覚寺を歩いているときも、二人は「建物も雰囲気も韓国の寺と共通点が多いですね」と言っていた。私は外国人に対しては、「神社も寺もともに我が国庶民の心のよりどころでした」くらいの説明にとどめておくことにしている。カジュアルな信仰心は、毎週日曜日に教会や聖堂に通う人の多い韓国の人や、生活圏内に多くの廟がある台湾の人々には理解してもらいやすい。

 鶴岡八幡宮に向かう途中の休憩所で団子とお茶をいただく。団子は韓国読みの「ダンジャ」でも通用するくらい韓国でも知られた和菓子だ。韓菓と呼ばれる韓国の伝統菓子とも共通点が多いので、安心してすすめられる食べ物だ。