鶴岡八幡宮は外国人、とくに欧米人らしき観光客で賑わい、円覚寺とは比較にならないくらいの人出でゆっくり建物を見て回る感じではなかった。

 出版社の社長は草花に詳しいので、八幡宮の境内にあった藤棚に見惚れていた。ガイド役の光瀬氏が、「八幡宮の前から海に至る桜並木が数年前に植え替えられたので今はまだ若木で、桜のトンネルができるまでには時間がかかります」と話すと、社長が「花を派手に咲かせる樹木ほど樹齢は短いんです」と教えてくれた。草木も人も種類はさまざまだが、エネルギーの総量は同じなのだろうか。派手に生きても、地味に生きても結局は同じこと……などと哲学的なことを考えてしまった。

ゲストの韓国人二人は鶴岡八幡宮に奉献されていた日本酒に興味を持っていた(出版社社長の撮影)

 八幡宮を出て小町通りを鎌倉駅方向に歩き、光瀬の娘さんがアルバイトをしていたレストランバーでカレーのランチをとる。

 鎌倉駅の西側の生活感のある通りをさらに南に歩き、和田塚駅で江ノ電に乗る。昨日乗った都電荒川線に続く、レトロな乗り物体験である。次の目的地は鎌倉大仏のある高徳院の最寄りの長谷駅だ。(つづく)

レストランバーで食べたカレーライスにはビーフストロガノフのようなまろやかさがあり、美味しかった。韓国の人はカレーに対しては保守的(昭和っぽいカレーに慣れている)なので、二人には弱冠の違和感があったようだ
和田塚駅で江ノ電を迎える一行。左からラジオの放送作家、光瀬憲子、出版社社長