チ・ヒョヌ扮する3人の子どもをもつ男やもめと、その住み込み家庭教師、14歳差のピュアロマンス。『紳士とお嬢さん』の構図は、名作『サウンド・オブ・ミュージック』を彷彿させ、丁寧な物言いながらも威圧的でどうにもつまらない堅物会長が、思ったことを言ってしまう(当然あとで反省する)溌剌ヒロインに心を溶かされていく姿にときめくだろう。
失敗しながらも子ども3人を一生懸命に育てるパパぶり、久しぶりの恋心に戸惑い、真面目に思い悩む恋愛不器用な男姿もかわいらしい、さらには、チ・ヒョヌがかつての年下男子ぶりを発揮させる機会もある。なにせ、長編劇、展開が波乱万丈すぎるのだ。
ヒロインの出生の秘密、はもちろんのこと、初恋、行き別れの家族の再会、一度は捨てた我が子との生活を夢見る母親、嫉妬と策略、記憶喪失、身分差恋愛に秘密恋愛、あまりに狭すぎる世間と人間関係、トラブルメーカー、実母との再会にまつわる葛藤、病……とにかく、どこかで聞いたエピソードが次々と現れる。
そのたびに思い悩み、間違った選択をする主人公にやきもきし、身勝手悪女たちの行動にイライラしながら、幸せな結末をいまかいまかと待ち望むようなるはずだ。
脚本家は、2006年の『憎くても可愛くても』(最高視聴率44.2%)以来、一貫してファミリー劇を担当してきたキム・サギョン。前作、『たった一人の私の味方』(2018-19)が最高視聴率49.4%を獲得するなど、ヒットメーカーとして知られている。また『憎くても可愛くても』では、当時俳優としては新人だったキム・ジソクを、『オ・ジャリョンが行く』や『バラ色の人生』ではイ・ジャンウを、愛され主人公に育ててきた人物。「国民の年下彼氏」から、「理想の紳士」へと華麗なる転身を果たしたチ・ヒョヌその活躍を見届けたい。
●『紳士とお嬢さん』ストーリー
継母ヨンシル(オ・ヒョンギョン)と義兄デボム(アン・ウヨン)の金銭トラブルから住むところを失ったダンダン(イ・セヒ)一家。折しも塾講師の職を失ったダンダンは恩師の紹介で、大手企業会長であるヨングク(チ・ヒョヌ)の家に住み込み、彼の3人の子どもたちの家庭教師をすることに。
妻を亡くした喪失感から抜け出せず、厳しいしつけのせいで、子どもたちから「頑固者」「独裁者」と呼ばれていたヨングクだったが、ダンダンが家庭教師としてやって来てからは、子どもたちの笑顔が増え家の中が明るくなっていくのを実感。そして、彼もまた子どもたちやダンダンと過ごすうちに笑顔を取り戻していく。
やがて、ダンダンはヨングクとの不思議な縁を思い出し、特別な感情を抱くように。ヨングクも、彼女を目で追う自分に気づいていく。そんな中、長年ヨングクの後妻の座を狙っていた執事室長のサラ(パク・ハナ)は、ダンダンに嫉妬と脅威を感じ、追い出そうと策略する。