韓国ドラマは、見たくないものまで見せられる。話の筋を「匂わせる」ことで済ませられることでも可視化する。徹底的に見せることで解釈に疑問の余地を残さない。あっぱれなほど中途半端を嫌うのだ。結果的に、見たくない場面も増えてくる。

 Netflixで配信中の韓国ドラマ『クイーンメーカー』も、そんなシーンが多かった。とにかく、人間の善意というものが信じられなくなるような登場人物が次々に出てくる。最初は、主役のキム・ヒエが演じるファン・ドヒもそうだった。

■キム・ヒエ扮する『クイーンメーカー』ヒロイン、一世一代の反撃!

『クイーンメーカー』の主人公ファン・ドヒ(キム・ヒエ)は、巨大企業ウンソングループの戦略企画室長である。恐ろしいほどの絶対権力者として君臨する会長ソン・ヨンシム(ソ・イスク)の忠実な部下として、グループに起こるスキャンダルをきたない手でもみ消していく。とてつもないやり手だが、同時に、友達になりたくないほど嫌な奴だ。

 同じように冷酷なのがヨンシムである。高級デパートを成長させた実績のある経営者だが、彼女がやっていることは賄賂を使って政治家を取り込むこと。経済的な犯罪を使ってグループの巨大化を推進している。その先兵がドヒなのだ。

 手を汚した恩恵として地位と富を得た彼女は、ヨンシムの娘婿のペク・ジェミン(リュ・スヨン)が起こした性的暴行にどう対処したのか。被害者はドヒの部下のハン・イスル(ハン・チェギョン)であったが、なんと、イスルのかつての水商売経験を調べ上げて泣き寝入りを強制した。そういう意味では、ドヒも共犯者であり、人間の醜さを露骨に見せていた。

 直後に、状況が一転する。ドヒが乗車しようとした車に人間が空から降ってきたのである。イスルが覚悟の投身自殺をしたのだ。衝撃を受けたドヒが改めてジェミンの弁明を調べ上げると、彼は性的暴行を隠すためにイスルのメールまで捏造していた。表向きは善人を装うジェミンだが、本性は女癖の悪い非道人間であった。

 しかも、その事実をヨンシムに告発しようとしたら、逆に彼女から厳しく警告を受けた。「従順な犬」であり続けろ、というわけだ。