Netfilxで国内視聴ランキング1位を爆走中のサイキックコメディ『ヒップタッチの女王』は、妙にクセになるドラマだ。人や動物のヒップに触れると、その過去が見えてしまうという一風変わったサイコメトリー能力を授かってしまった純朴ヒロインと、目に入るものすべてを事件と疑う熱血刑事の最悪の出会いから始まるストーリーは、テンポがよく、とにかく愉快。
驚いたり、怯えたり、喜んだりと、くるくると変わる表情でヒロイン、イェブンの素直さを好感度たっぷりに体現するのは、トップ女優、ハン・ジミン。『私たちのブルース』や『まぶしくて−私たちの輝く時間−』、『知ってるワイフ』に『イ・サン』まで、ヒューマンからラブコメディ、時代劇まで数多くの名作を生み出し、“出るものにはずれなし”の彼女が、今回も犬・ネコ・牛から人まで、おそるおそるヒップに触れるお人好しヒロインを、彼女ならではの愛らしい魅力を吹き込んでいる。
そんな彼女と対極をなす、ふてぶてしくて空気の読めない刑事ジャンヨルを飄々と演じるイ・ミンギがまたいい。ソウルでは凶悪犯罪を扱ってきた彼が、牛の暴走や畑荒らしが大事件の平和な町に左遷され、いちいち肩の力入りまくりな武装で挑むさまのおかしいこと!
のんびりした田舎の住人たちとのズレたやり取りも爆笑もので、ともすれば、ウザいだけに見えそうな癖の強いキャラクターを、どうにも憎めない人間味あふれるキャラクターに昇華しているのはさすが。
イ・ミンギといえば、『私の解放日誌』の3きょうだいの真ん中で、女きょうだいにはさまれた長男チャンヒ役の好演が記憶に新しいが、モデル出身で個性豊かなキャラクターで強い印象を残してきた人気俳優のひとりだ。
1985年1月16日生まれで38歳(2023年8月現在)のイ・ミンギだが、芸能界デビューのきっかけは、その「強い目ヂカラ」。大学生のときにカン・ドンウォンが所属していたモデル事務所の社長が、ミンギの写真に目をとめ、スカウトしたことから始まる。その後、芸能界デビュー。大ヒットホームドラマ『がんばれ!クムスン』で、ヒロインの義兄役に抜擢され、ブレイク。
近年なら、クールで有能な財閥御曹司を演じた『僕が見つけたシンデレラ〜Beauty Inside〜』でのスマートなツンデレぶりが印象的だ。
チョン・ソミンとのラブロマンス『この恋は初めてだから〜Because This is My First Life〜』では合理的な独身主義でややめんどくさい主人公に扮し、視聴者にときめきを与えた。一見情けなかったり、むかつくキャラクターでも、ミンギが演じると“なぜか素敵に見えてくる”不思議な魅力をもつのだ。
本作でも、見るものすべてを事件と疑い、先走りすぎる元エリート刑事という“めんどくさい系”キャラをいい感じの抜け感で演じ、物語を面白くしている。権力者には媚びへつらう俗物っぽさも含めて人間的で、ハン・ジミン演じる純朴ヒロインと今後どうコンビを組んでいくのか、どのような過去が明かされるのか、目が離せない。