仁川国際空港に着いたのは夜の11時近かった。翌日の夕方の飛行機でバンコクに向かう。トランジット扱いの韓国入国である。

 飛行機を乗り継いでいくとき、このトランジットが障壁にもなることもあれば、得することもある。トランジットは航空会社というより、利用空港のルールに左右されることが多い。たとえば航空会社が、1日以内の乗り継ぎをトランジットとしても、利用空港が1日をどうカウントするかというルールが優先される。

 飛行機が到着してから24時間以内を1日としてトランジット扱いにしている空港が多い。しかし午前0時をまわってしまうと2日とカウントする空港もある。到着日に乗り継ぐことがトランジットという解釈だ。空港によっては、それが2日、3日と長く設定していることもある。

 トランジット扱いになるかならないか……。それは航空運賃に反映される。もちろんトランジット扱いにしてくれたほうが安くなる。

 ソウル近郊の仁川国際空港は24時間制をとっていた。夜の11時近くに空港に着いた場合、翌日の11時前に出国すればトランジット扱いになる。僕はそれを利用しようとしていた。トランジットでも韓国に入国できるから、その間にソウルに出て用事をすまそうと思ったのだ。

■仁川国際空港に夜到着、空港近くの永宗島の宿を目指す

 さて、どこに泊まろうか。空港からソウル市内へは1時間ほど。ソウル市内に出ることも可能だが、空港近くに泊まる方法もある。ネットで検索すると、何軒かのホテルが出てきた。ゲストハウスもある。仁川国際空港周辺は、そこそこの街なのだろうか。

 仁川国際空港は、仁川沖にある永宗島(ヨンジョンド)と龍遊島(ヨンエド)の間にある海を埋めたててつくられた。空港ができたことで、このふたつの島はつながってしまった。島の規模からすれば、永宗島のほうが大きい。地図を見ると、島にはそこそこの街があるようだった。

 仁川国際空港に着くと、すぐに電車やバスでソウルに向かってしまう人は多い。空港周辺を眺めることもないのでなにもないような気になるが、そうでもなさそうだった。

 空港周辺の宿に泊まってみることにした。翌朝、時間があれば、近くの公園に出かけ、離発着する飛行機でも見てみようか。そんな思いもあった。

 ホテルの予約サイトから安めの宿を探して予約した。すると宿からラインをつないでほしい……というメールがきた。接続すると、宿への行き方やチェックインの方法が書かれた連絡が届いた。日本語だった。

 それを読むと、宿にはチェックインカウンターはなく、勝手に部屋に入るスタイルだった。部屋に入るパスコードなどはメールで送られてきた。最近、この種の宿は少なくない。宿のスタッフに会わずに部屋に泊まるシステム。そもそも常駐スタッフはいないのだろう。

 そこに宿への行き方が記されていた。それによると、以前は電車が走っていたが、いまは無料シャトルバスになったということだった。

 仁川国際空港周辺を走る電車があったということだろうか。調べると仁川空港磁気浮上鉄道が2016年に運行をはじめていた。リニアモーターカーである。ところがコロナ禍の影響を受けたのか、2022年に休業。整備の遅れを理由に、休業は2024年までつづくことになっていた。