さらに、ドギムもサンの気持ちが自分にあることを確信する。

 ひとつは、サンが初めて亡き父・思悼世子(サドセジャ)のことをドギムに話したこと、もうひとつは、貴重なミカンをドギムのためにとっておき渡したことから、彼の想いに気づくのだ。

 自分の好きなことをしてほしいというドギムに、「今している。好きな場所で、好きな人と」と少しはにかんだ表情で告げるサンだが、これはもう告白だろう。貴重なミカンを「余ったから」と言って差し出すも、「私には分不相応なものだ」と拒むドギムがもどかしい。

 ちなみに、原作小説ではこのミカンのくだりも重要なエピソードとして出てくる。やはりドギムは拒むのだが、その理由は単に「食べ方がわからない」というもの。ミカンは王宮への献上品であり、宮女には食べたことのない貴重なものだったようだ。

 また、ドギムのことで思い悩むサンに、英祖が語る言葉も印象的だ。

 ドギムのことが思い通りにいかず苛立つサンだが、英祖はこう言う。

「王位に就く者は、心のうちを明かせる相手、女人が必要だ。王も人の子だ。1人くらいは、心からいとおしみながら生きなければ。さもなくば耐え抜けぬ」と。

 このセリフは、物語を通して大きな意味を持ち、原作では英祖の側室でサンの祖母・暎嬪(エイビン)イ氏が幼いサンに語った言葉として出てくる。

 さらに、サンはある男がドギムに青い腕ぬきを贈る場面を目にしてしまう。王の女である証として宮女の袖先が「赤色」に染められていることは1話でも語られたが、その証が青色で隠されたことに対するサンの嫉妬と不安が、このエピソードに詰め込まれている。原作でも出てくる“肝”になる場面だ。

「お前のすべては私のものか。お前の考え、意志、心は皆、私のものか」……サンの抑えきれないドギムへの思いが爆発するラストも、ヒリヒリする!

 ちなみに、原作との比較でいえば、父が亡くなって初めて咲いたという花を見せるくだりがあるが、これはドギムがサンの承恩を受け、子を身ごもったのちのエピソードとして出てくる。非常に泣ける話なので、原作もぜひチェックしていただきたい。

●作品情報

『赤い袖先』

[2021年/全17話]※TV放送は全27話 

演出:チョン・ジイン、ソン・ヨナ 脚本:チョン・ヘリ

出演:ジュノ(2PM)、イ・セヨンカン・フンイ・ドクファ

DVD&Blu-ray販売元 ‏: ‎NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン