韓国ドラマや韓国映画でたびたび描かれる詐欺事件。同じ詐欺でも“投資”となると、自己責任論が振りかざされ、世間の目は冷たい。自業自得だといわれることもある。だが、劇中でも印象深いセリフがあるが、被害者はお金だけではなく人生も奪われる。「殺される人より、詐欺をされて自殺する人のほうが多い」のである。
一方で、本作で描かれる被害者は弱者だけではない。被害者の中には、お金を取り戻すため自ら詐欺グループに加担していく者もいる。どう考えればいいのか、なかなか難しいが、つまりは人の欲が絡み合う詐欺事件の裏側には知られざる人間ドラマがうごめいているのだ。
このドラマを通して感じられたキーワードは、“暗中模索”。そのイメージがよく表されてるのが、「あの夜、ついに勝ったんだ でも何に?」と自問自答するようなエンディング曲と、終盤の雪原のシーンだ。
ネタバレになるので、どんな場面なのかの説明は控えるが、この雪原シーンは鬱陵島で撮影された。離島にそんなに雪が?と思っていたら、日本海の孤島である鬱陵島は韓国で最も積雪が多いところで、1日で150センチ積もった年もあるとか。撮影も極寒で大変だったそうだが、これほどの秀作を世に送り出せたのなら苦労の甲斐もあっただろう。
チャン・グンソクは、長い演技キャリアがあるにもかかわらず、本作の出演にあたり演技トレーニングを受けている。相当な意気込みがあったのは確かで、新しいチャン・グンソクが見られるのはひとつの見どころでもある。