だが、何といってもこのドラマの中で最も存在感を放っていたのは、ノ・サンチョン役のホ・ソンテだろう。個人的に今最も注目している俳優のひとりなので、ここは熱く語っておきたい。
『イカゲーム』に出演以降、オファーが殺到し、悪役専門俳優の異名をもつ彼だが、これほど変化のある悪役は初めてだったという。
ただのチンピラだった若い頃から、詐欺の才能に目覚め、巨額詐欺事件を起こすカリスマ詐欺師になるまでの極悪人ノ・サンチョンを、表情や声色を少しずつ変えながら大胆不敵に演じている。前作『カジノ』でも最期に大きな見せ場があり、役に恵まれているなぁと思っていたが、それだけではもう説明ができない。本作で役者としてのひとつの高みに立ったのではないか。
子役から始めたチャン・グンソクと違って、ホ・ソンテが俳優を始めたのは30代半ば。もとは大手企業LGの営業マンで、ロシア地域を担当していた(そのロシア語の堪能ぶりは、『怪物』で披露している)。現在45歳なので、俳優歴は何とまだ10年ほど。つまり、チャン・グンソクは俳優の大先輩なのである。
ちなみに悪役ばかりの印象がある彼の意外な作品としては、コミカルな面を見せる『サイコパスダイアリー』がよく知られているが、『愛と笑いの大林洞(テリムドン) 』も絶品だ。妙な勘違いをしてドツボにハマる元ヤクザを好演している。『餌【ミッキ】』とはあまりに違う愛らしい姿に驚くはずだ。
強面コメディアンの実力は、大人気コメディショー『SNL KOREA シーズン2』でも発揮していて、これらを観るとまだまだ俳優としての伸びしろがたっぷりあると感じるだろう。
本作は、『パラサイト 半地下の家族』のパク・ミョンフン、『気象庁の人々: 社内恋愛は予測不能?』のイ・ソンウクなど、いぶし銀な脇役の名演技が見られるのも魅力だが、そんなホ・ソンテを輝かせた注目キャストとして、ここは国会議員役を演じたパク・ユンヒを挙げたい。
2022年から急激にドラマ出演が増えた中堅俳優で、『ザ・グローリー 〜輝かしき復讐〜』ではソン・ヘギョ演じる主人公の高校時代の担任教師、『愛と、利と』ではムン・ガヨン演じる主人公の父親役を印象的に演じていて、少し前から気になっていた。この2作を観た方なら、「うーん」と思い出せば顔が浮かぶと思う。
本作ではこれまでの役柄とはまったく異なる超絶下品な権力者に扮しているのだが、同じ俳優とは思えないほど。これはもしかすると私だけかもだが、ホ・ソンテとの悪役激突シーンには震えるはずだ。
●配信情報
『餌【ミッキ】』U-NEXT独占先行配信中
[2023/全12話(PART1全6話/PART2全6話)]演出:キム・ホンソン『ペーパー・ハウス・コリア:統一通貨を奪え』『ボイス~112の奇跡~』、脚本:キム・ジヌク『ミストレス~愛に惑う女たち~』
出演:チャン・グンソク『スイッチ~君と世界を変える~』『テバク~運命の瞬間(とき)~』『美男(イケメン)ですね』、ホ・ソンテ『イカゲーム』『カジノ(シーズン1、2)』『エージェントなお仕事』 、イ・エリヤ『皇后の品格』『サム、マイウェイ〜恋の一発逆転!〜』、イ・ソンウク『気象庁の人々:社内恋愛は予測不能?!』、パク・ミョンフン『パラサイト 半地下の家族』『愛の不時着』
●DVD情報
DVD-SET1/2023年11月3日(金)発売・Vol.1~6レンタル、DVD-SET2/2023年12月6日(水)発売・Vol.7~12レンタル
発売・販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
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