朝鮮王朝時代の名君イ・サン正祖)の若き姿を、1人の女性を愛した男としての側面から描いた王宮ロマンス赤い袖先』。「王の求愛を2度にわたって断った」というイ・サンの側室・宜嬪ソン氏の逸話をモチーフにした小説の魅力を抽出した名編で、主人公サンを演じたジュノ2PM)をトップスターの座にのし上げた大ヒット作だ。

 本作の演出を手掛けたチョン・ジイン監督は、「原作小説のラストが素晴らしくて、これを映像化してイ・サンとソン・ドギムの愛の完結をお見せしたいと思った」と語っている。ここでは、原作とドラマの違いと魅力を解説する。

●ドラマ『赤い袖先』ストーリー

 幼い頃に父を亡くし、宮中で孤独に育った世孫のイ・サン(ジュノ/2PM)は、ある夜、宮女ソン・ドギム(イ・セヨン)の機転で窮地を救われた。数年後、サンは東宮の書庫で働くドギムと再会。しかし、司書と勘違いされてしまう。世孫とは知らず無礼な態度のドギムに惹かれていくサン。2人は次第に距離を縮めていくが……。

■ドラマは世孫イ・サンと英祖の関係、原作小説はイ・サンが王になってからのロマンスにスポット

「私がお前に振り回されているのか?」「私を恋慕しなくても、お前は私のものだ」など、サンのドギムに向けたロマンチックな愛の言葉は、原作小説にあるもの。

 チョン・ジイン監督が、絶対に使いたい小説のセリフやエピソードに付箋を貼って脚本家に渡したというように、印象的なセリフは、ほぼ原作に出てくる。

 一方で、大きく異なるのは、ドラマはサンの世孫時代がメインで、祖父である英祖との関係に重きが置かれているのに対し、原作は英祖はほぼ出てこず、サンが王になって以降の物語が主になっている点だ。

 サンに対する過度な期待から厳しく接する英祖と、その重荷を背負うサンのやり取りがドラマの見どころだが、原作では、サンの心の傷はむしろ父(思悼世子)との関係にある。

 亡き父が起こした不祥事に対する罪悪感、父に愛されなかった悲しみが、サンの心に重くのしかかり、それをドギムが理解していくことから、2人の関係は特別なものになっていく。

『赤い袖先』(C)2021MBC