彼女の女優としてのターニングポイントとなった作品は、2013年の『九家の書〜千年に一度の恋〜』だ。

 当時のインタビューで、「これまでは演技が何か、よくわからないまま撮影していた。でも、このドラマで初めて、役の気持ちで相手を愛することを知った。涙を流す必要がない場面で、涙があふれてしまったり、本当に怒ったり、苛立ったり、悲しんだりした。それは自分でも不思議な感覚で、演技というものの魅力にハマる感覚を味わえた作品だった」と語っている。

 ちなみに、『九家の書』で演じた役どころは、武官の父を持ち、幼い頃から武術をたしなんで育った男勝りなヒロイン。スジ自身もテコンドー師範の父のもとで厳しく育てられ、テコンドーも2段という有段者で、自分らしく演じられたことも大きかったようだ。

 その後も、アイドルと女優業を並行して行ってきたが、2017年にmissAが解散して以降は、演技活動に本腰を入れ始める。

 特に、起業の夢を抱くヒロインに扮した青春ロマンス『スタートアップ:夢の扉』(2020年)では、生き生きしたキャラクターで多くの視聴者に愛された。さらに、2022年に主演した『アンナ』では、今までとイメージを一新。経歴を詐称したヒロインを圧倒的存在感で見せ、百想芸術大賞にノミネートされるなど、女優として大きく飛躍した。その勢いに乗って生まれた本作は、スジの魅力が全開している。

 スジばかりでない。イ・ドゥナとはまるで違う世界に生きてきた純朴青年イ・ウォンジュン役をヤン・セジョンが誠実で柔らかな雰囲気で見せ、心を掴まれるポイントになっている。

 イ・ドゥナに翻弄され、ときに反発しながらも、「北風と太陽」の太陽がごとき正当法で、彼女の心を溶かしていくウォンジュンは、ある意味理想の彼氏像かもしれない。これが除隊後初の復帰ドラマとなるヤン・セジョンの等身大の魅力が光る。

Netflixシリーズ『イ・ドゥナ!』独占配信中

 演出を手掛けるのは、ヒョンビン×ソン・イェジンの超大ヒット作『愛の不時着』や、イ・ジョンソク×イ・ナヨン主演『ロマンスは別冊付録』などでも知られるイ・ジョンヒョ。若者たちのガラスのように脆く切ない恋物語を、美しい映像と音楽で彩っていく。

●『イ・ドゥナ!』ストーリー

 人気アイドルグループ「ドリームスイート」のメインボーカルとして活躍するイ・ドゥナ(ペ・スジ)は、ある出来事をきっかけに引退を宣言。大学の演劇映画科に復学することに。

 学生街のシェアハウスに引きこもる彼女の前に現れたのは、土木工学科2年の平凡な大学生ウォンジュン(ヤン・セジョン)だった。はじめはウォンジュンをストーカーと勘違いするドゥナだが、彼の優しさに触れ、心を開くように。そんななか、ウォンジュンは初恋のひと、ジンジュと大学で再会。恋愛不慣れなウォンジュンにあれこれ指南するドゥナだったが……。

●配信情報

Netflixシリーズ『イ・ドゥナ!』独占配信中

[2023年/全9話]演出:イ・ジョンヒョ『愛の不時着』『ロマンスは別冊付録』 脚本:チャン・ユハ

出演:ペ・スジ、ヤン・セジョン、ハヨンパク・セワンキム・ドワンキム・ミノ