パク・ウンビン主演ドラマ『無人島のディーバ』7話。ソウルのターミナル駅の有人カウンターでモクハが乗車券を買うシーンがあった。

「いちばん乗客が少なくて、遠くへ行く列車はどれですか?」

 しがらみから逃れたくて発せられた言葉だが、私のように気ままな旅が好きな者にとっては、大変印象的なシーンだった。

 現実にこんなふうに乗車券を買う人は滅多にいないと思うが、映画では何度か観たことがある。

韓国映画に登場するあてもない旅、行き先は江原道

 映画『愛してるマルスンさん』(2005年)でムン・ソリ扮するシングルマザーの息子(イ・ジェウン)が家出しようと、駅員にこう告げるシーンがあった。

「江原道へ」

 そう、多くの韓国人は「乗客が少なくて遠いところ」と聞けば、江原道をイメージするはずだ。

「僻地」「左遷先」「逃亡先」として、江原道は映画によく登場する。

『バッド・ガイズ2~悪の都市~』のパク・チュンフン主演『ラジオ・スター』(2006年)。『カジノ』のチェ・ミンシク主演『春が来れば』(2004年)と『ラブレター ~パイランより~』(2001年)。『ムービング』のカン・ドングン主演『最後の狼』(2004年)。『私たちのブルース』のチャ・スンウォン主演『ぼくらの落第先生』(2003年)。『ムービング』のムン・ソングン主演『彼らも我らのように』(1990年)が好例だ。

咸昌駅から北東方向に2駅の龍宮駅に降り立つ筆者(チョン・ウンスク)写真:『韓国の人情食堂』(双葉文庫)