周囲を歩いてみた。裏手には小学校があった。後で資料を見ると、そこは九龍浦小学校があった場所だった。
その後、石段をおり、残った日本人家屋の街を歩いた。そこで中年の韓国人女性から声をかけられた。九龍浦の街の日本語ボランティアガイドさんだった。彼女が九龍浦神社跡も再度案内してくれた。
「面白いものをお見せします」
それは石段の途中で左右に並ぶ石柱だった。そこには漢字で名前が刻まれていたが、すべて韓国人の名前だった。
「裏を見てください」
石柱の裏にはなにかをコンクリートで埋めた跡があった。上下につづく石柱もすべて中央にコンクリートが塗られていた。
「日本人の名前?」
「そうです」
かつてそこに刻まれていたのは、九龍浦神社に寄進した日本人の名前だった。その名前をコンクリートで隠し、石柱を裏返しにして韓国人の名前を刻んでいく。神社ではそこまで日本は排除されていったのだ。
しかし街に入ると、その様相は一転する。その話は次回に。