■酔っ払い映画の金字塔『昼間から呑む』(2008年)
真冬の江原道を舞台とした映画『昼間から呑む』では、ソウルから一人旅してきた主人公とその仲間たちが、ビニールハウスの中で薬草酒の杯を次々に乾していく。道中、さまざまなトラブルに巻き込まれた主人公が次なる困難に見舞われる前、つかのまの安らぎを得る場所としてビニールハウスが使われている。
昼間の陽ざしでかろうじて暖をとれるその空間は、旅人が羽を休める場所として大変似つかわしかった。
■不思議な魅力のビニールハウス『イエロー・ヘアー』(1999年)
1990年代にさかのぼると、当時としては過激なラブシーンが話題となった映画『イエロー・ヘアー』が思い浮かぶ。農村のビニールハウスに居候している金髪の不良娘二人が、ソウルからドロップアウトしてきた男を迎え入れ、放蕩の限りを尽くす。
スタイリッシュな二人が装飾したその空間は退廃的だが、不思議な魅力がある。最近は韓国の宿泊施設も多様化しているので、そのうちビニールハウスの宿ができるのではないだろうか。
■ビニールハウスを密会の場として描いた『ウムクベミの愛』(1990年)
パク・チュンフンとチェ・ミョンギル。90年代二大スターの共演で話題となった映画『ウムクベミの愛』(1990)では、ミシン工として働く二人の道ならぬ恋の場としてビニールハウスが使われた。冬でも温かいその空間はまさに愛の巣だったが、当時の韓国の人間関係は過干渉で、道徳を笠に着た近隣住民に踏みにじられてしまう。
以前観た日本映画『遠雷』(1981)でも、トマト農家の青年(永島敏行)がビニールハウスで意中の女性(横山リエ、石田えり)と逢瀬を重ねるシーンが印象的だった。
ちなみに、ビニールハウスがなかった時代、どんなところが密会に使われていたかおわかりだろうか?
水車小屋(ムルレバンア)や桑畑(ポンバッ)である。水車小屋は村から少し離れたところにあり、無人なので人目を忍ぶのに最適だった。また、桑畑は桑の背が高く、その中に入れば、外からは見えなかったからだ。
日本のレンタルビデオに初めて流通した韓国映画として話題になった作品のひとつに、ずばり『桑の葉』(1986年)がある。夫が旅に出ている間に村の男たちと桑畑で不貞を働く女性(イ・ミスク)の話だ。
なお、『ウムクベミの愛』と『桑の葉』は、韓国映像資料院のYouTubeで無料視聴できる。
*韓国映像資料院YouTube https://www.youtube.com/user/KoreanFilm