戦場でもオン・ダルは顕著な活躍を見せ、飛躍的な出世を遂げた。平岡王の後を継いで即位した嬰陽王(ヨンヤンワン)に向かってオン・ダルが宣言した。

新羅(シルラ)が奪った土地を取り戻してきます」

 出陣したオン・ダルは、激戦の末に戦死してしまった。彼を弔う際、棺を載せた台車は一向に動かなかった。そこで、ピョンガン王女が棺に向かって「もう心配しないでください。安らかに天国に行きましょう」と話しかけると、台車は奇跡的に動き出した。こうして高句麗の人々は、傑出した英雄の死を深く悼んだ……。

 以上が韓国で有名な「ピョンガン王女と馬鹿のオン・ダル」の歴史エピソードだ。

 この話をモチーフにして『王女ピョンガン 月が浮かぶ川』が作られたのだが、ストーリーの大半はフィクションで、愛国心が強いピョンガン王女と素朴で実直なオン・ダルの2人が試練を乗り越えていく過程が壮大な歴史絵巻として描かれる。

 それでも、重要なストーリーのポイントで歴史エピソードを彷彿させる展開になっていく。そこがとても面白い。

 オン・ダルに扮したナ・イヌは、いま話題作となっている『私の夫と結婚して』でパク・ミニョンを相手に堂々たる演技を披露している。旬の俳優のセンスを知るうえでも、『王女ピョンガン 月が浮かぶ川』は楽しみなドラマになっている。