キム・ソヒョンは子役時代から強烈な個性を持っていた。特に『太陽を抱く月』(2012年制作)で見せた意志の強い少女の役が忘れられない。ドラマの序盤で子役スターのキム・ユジョンの達者な演技が評判になったが、出番がずっと少なかったキム・ソヒョンの存在感も負けてはいなかった。彼女は決して「その他大勢」ではなかったのだ。
そのキム・ソヒョンが『太陽を抱く月』から9年後、大人の女優として堂々たる主役女優の貫禄を見せたのが『王女ピョンガン 月が浮かぶ川』であった。
本作は、テレビ東京の韓流プレミアで2月23日から地上波放送されるが、韓国でよく知られている「ピョンガン(平岡)王女と馬鹿のオン・ダル(温達)」という逸話がストーリーの骨子になっている。
それは、どんな話なのか。とても興味深いので、その内容を紹介しよう。
■『王女ピョンガン』の基になった韓国で有名な逸話とは?
物語の舞台は6世紀の高句麗(コグリョ)。この地を治めていたのは平岡王(ピョンガンワン/史実では25代王・平原王〔ピョンウォンワン〕のこと)だった。
彼の娘ピョンガン王女はとても泣き虫。平岡王は深いため息をつき、「そんなに泣くなら、馬鹿のオン・ダルのお嫁さんにしてもらえ」と嘆いた。オン・ダルは優しい男であったが、視力を失った母親の世話と貧困の生活に明け暮れ、周囲から嘲笑されていた。
ピョンガン王女が16歳になったとき、彼女は縁談の話に強く反発し、王宮を飛び出してオン・ダルのもとへと走った。父のかつての言葉を実行に移したのだ。平岡王の怒りは天を衝くが、王女の決意は固かった。
「まさか王女が……」とオン・ダルも驚き、彼もこの結婚を信じられずに断ったが、王女の不屈の説得によりついに承諾した。
王女は持参金をオン・ダルに渡して「これで馬を買ってください」と言った。しかも、商人から見向きもされないような貧弱な馬を選ぶように、と付け加えた。オン・ダルが貧弱な馬を購入すると、王女は全力を尽くして馬を立派に育て上げた。
その馬に乗ってオン・ダルは平岡王が主催する狩りの競技に参加し、群を抜く成績を収めた。平岡王はオン・ダルの真価をようやく認め、立派な婿を褒めたたえた。