Netflix人気ドラマ『ドクタースランプ』で、パク・ヒョンシク扮するジョンウは、パク・シネ扮するハヌルの家の屋上にある「オクタッパン」に住んでいる。
オクタッパンとは、漢字で書くと「屋塔房」。エレベーターの付いていない多世帯住宅や雑居ビルなどの屋上にある簡易住宅のことだ。日本語では「屋上部屋」「屋根部屋」などと訳され、これまでも数多くのドラマや映画の舞台になっている。
オクタッパンは、建物の最上階のさらに上にあるので、階段の上り下りが大変。冬は寒く、夏は暑い。水の出が悪い。
しかし、ソン・ガンホ主演映画『パラサイト 半地下の家族』に出てきた半地下部屋同様、家賃は安く、住居以外の屋上スペースを庭のように使えたり、日当たりがよくて開放的で洗濯物も干せたりするなど、メリットもなくはない。
今回は、オクタッパンの“明”を象徴するドラマ『ドクタースランプ』と、“暗”を象徴する映画『豚が井戸に落ちた日』を紹介しよう。
■Netflix人気作『ドクタースランプ』で描かれるオクタッパンの“明”
家賃の安いオクタッパンにはたいていもの悲しさがつきまとう。しかし、『ドクタースランプ』の場合は、ジョンウとハヌルが屋上の縁台で缶ビールを飲んだり、たがいの感情をおさえつつドキドキしながら向き合ったり、ハヌルがジョンウに抱きついたり、二人が楽しげに洗濯したりしている。
もの悲しいどころか、二人の距離を縮めるスポットとして描かれているのだ。
そもそも、ハヌルの家の近くには高級な新羅ホテルがあるくらいなので、ロケーションがよい。都会なのに緑が豊か。傾斜地の高いところにあるので眺めがよく、ソウルの東方向が一望できる。
ジョンウはハイソな暮らしから転落してきたので、屋上暮らしは気の毒だと多くの視聴者は思っただろう。だが、よく考えたら我が国で30歳そこそこの男子がオクタッパンに住んでいてもなんら不思議ではない。医大に6年通い、軍隊にも行っていたら社会経験は4、5年しかない。ふつうは親がかりでない限り高級アパートなどに住めるわけがないのだ。
『ドクタースランプ』の影響でオクタッパンのイメージがよくなり過ぎると、そのうち民家やアパートの空き部屋を旅行者に貸し出す民泊サービスに、オクタッパンが登場しても不思議ではない。いや、私が知らないだけで、すでにあるのかもしれないが。