仁川国際空港から電車でソウル駅に着く。モーテル系の宿はなくなってしまったが、やはりソウル駅周辺に泊まることが多い。その日に人に会う用事があると、宿に荷物を置いて、再びソウル駅に戻り、地下鉄の改札口に向かっていく。
ソウル駅は地下鉄の1号線と4号線が乗り入れている。2路線の駅はつながっているから、どこの改札から入ってもいい。そこで路線図を眺める。昔は掲示されている路線図を見た。いまはスマホで路線図を見ることも多い。そのとき、いつも暗澹たる思いに苛まれる……というのはややオーバーかもしれないが、路線図を目に気分は沈む。
「どうしてこんなにも路線が多いんだろう」
■ソウルの複雑な地下鉄路線図を眺めてみる。乗ったことのない路線は?
ソウルの地下鉄路線図には、東京の地下鉄路線図をはるかに凌ぐ路線が描かれている。そのとき、いつも思い出すソウル在住の知人の言葉がある。
「ソウルの地下鉄の路線図を見て、びっくりしないでくださいね。ソウルは地上を走る路線もどれも地下鉄って感じで路線図をつくっているから圧倒されるだけです。東京でいったら、山手線や中央線も、全部、この地下鉄路線図に入っていると思ってください」
そう思うと、少しは楽になってくる。ソウルの地下鉄の路線図は、ソウルを走る全路線図と考えればいい。それはある意味、親切なことだ。東京を走る電車の路線図は、地下鉄とJRや私鉄を区別して描く傾向が強い。東京にやってくる外国人は、別々の路線図を組み合わせていかなくてはならない。
しかしそう自分を落ち着かせたところで、目的地の駅までの路線がたちどころにわかるわけでもない。何回か乗ってみると、乗換駅で延々と歩いたり、運行会社が違うのか、唐突に改札に出くわすこともある。そこでも若干、戸惑う。しかし交通カードを手にしていれば、すんなり通過できてしまうから、その疑問はすぐに氷解してしまうが。韓国のことだから、駅名を入力すれば、たちどころに最短ルートを教えてくれるアプリはあるのだろうが、昔から路線図を眺めてきた癖で、つい路線図を読み解こうとしてしまう。
ソウル駅の場合は、1号線か4号線のどちらを選ぶか……で迷う。路線を辿っていくと、結局、1号線でも4号線でも変わりはあまりないことがわかることも多い。とにかく、改札の前で、僕は2、3分は固まってしまう。