演劇の舞台から演技活動を始め、今も事あるごとに舞台に立っているイ・ヒジュン。『棚ぼたのあなた』でお茶の間でも人気となり、昨今は実力派俳優としてドラマ、映画で破竹の勢いを見せている。最近では『殺人者のパラドックス』で40代にして60代の殺人鬼役を演じていた。25kgも体重を増やして挑んだ映画『KCIA 南山の部長たち』の警護室長役も印象深い。
そんなイ・ヒジュンが本作で演じるウジェは、狡猾な政治家だ。祖父は元大統領で、父は大企業グループの会長である。普段は誠実を装うが、実は利己的で野心が強く、人工培養肉の利権に絡もうといろいろ仕組みBF社を追い詰めていく。いわば物語を盛り上げるためになくてはならない、ちょっと見では悪役には見えない悪役だ。
韓国ドラマを観ていて、こんな政治家が実際にいたら怖いなと思うことがあるが、今回のイ・ヒジュン演じるウジェもまさにそうである。あまりに演説の説得性、人を巻き込む迫力があり、自分なら少々理不尽なことでも納得させられてしまうかも……と震えて観ていた。
イ・ヒジュンは、最近のインタビューでパニック障害を患っていることを告白している。趣味もなく、ただただ演技のことばかり考えていたら発症したのだという。『殺人者のパラドックス』の撮影中にも発症したと話している。『支配種』のときはどうだったか明かされていないが、そんなふうに役にのめり込む彼だからこそ、この臨場感が出るのかもしれない。
ハン・ヒョジュのインタビューによると、本作は1テイクを5分以上のロングテイクで撮影することも多く、イ・ヒジュンはテイクごとに違う演技をしていたとか。「今度はどんな演技をするのだろうと楽しみだった」という。
後半に行くほど存在感を増していくイ・ヒジュン。最終回も見逃せない。今後もNetflixドラマ『悪縁』、映画『ボゴタ』などの出演作が公開を待ち構えているが、まずはこの『支配種』で、ワンシーンごとにどんな悪役演技を披露し、どうドラマを盛り上げていくのか、じっくり楽しんでほしい。
●配信情報
『支配種』
ディズニープラス スターにて全話独占配信中
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[2024年/全10話]監督:パク・チョルファン『グリッド』(共同演出) 脚本:イ・スヨン『秘密の森〜深い闇の向こうに〜』『秘密の森』シーズン2、『ライフ』『グリッド』
出演:チュ・ジフン 『キングダム」『宮~Love in Palace』、ハン・ヒョジュ『ムービング』『トンイ』、イ・ヒジュン『殺人者のパラドックス』『マウス~ある殺人者の系譜~』、イ・ムセン『ザ・グローリー 〜輝かしき復讐』『マエストラ』