■『義兄弟 SECRET REUNION』(2010年)、カン・ドンウォンとの初共演作

 韓国の諜報員(ソン・ガンホ)と北朝鮮の諜報員(カン・ドンウォン)が互いの正体に気づかぬふりをしながらともに働き、同じ部屋で暮らす。寝食をともにし、共同作業を積み重ねるうちに心を開いていく。

 国は分断されていても同じ民族である二人がいっしょに祭祀を行う場面では、韓国人として涙を止められなかった。ソン・ガンホとカン・ドンウォンは大変相性がよく、お互いのよいところが出た作品だ。のちの『ベイビー・ブローカー』に続く3度目の共演に期待したい。

 なお、本作で、カン・ドンウォンの妻を演じたイ・ソユンは、のちに『賢い医師生活』にも登場するので探してみてほしい。

『義兄弟 SECRET REUNION』終盤の銃撃戦のシーンが撮影されたソウルの「ホテルPJ」前

■『青い塩』(2011年)、珍しい二枚目的な役柄 

 ソン・ガンホが演じたヤクザから足を洗ったキャラクターは、前出の『優雅な世界』に近いのだが、相手役が若く美しい元狙撃選手(シン・セギョン)ということもあり、異例の二枚目的役柄である。

 シン・セギョンの妹分役に扮したイ・ソムは、のちに『小公女』(2018年)でアン・ジェホンとのカップルを演じた女優だ。

■『弁護人』(2013年)、廬武鉉大統領の弁護士時代を熱演 

 ソン・ガンホが廬武鉉(ノ・ムヒョン)大統領の弁護士時代を演じた作品。見せ場は法廷での舌戦だ。

 弁護士「学生(イム・シワン)が本を読んで討論したことが国家保安法違反かどうか、証人はどう判断したのですか? 根拠は何ですか?」

 証人「私ではなく国家が判断するのです」

 弁護士「国家? 証人の言う国家とは何ですか?」

 証人「弁護士のくせに国家も知らんのか!?」

 弁護士「よく知っていますよ。(中略)国の主権は国民にあり、すべての権力は国民に由来するのです。国家とは国民のことなのです!」

 ソン・ガンホをはじめ、キム・ヨンエ(故人)、イム・シワン、オ・ダルス、イ・ソンミン、ソン・ヨンチャンら主要な俳優の多くが、釜山や慶尚道の出身なので、本物の南東部訛りを聞くことができるのも興味深い。