■辛くて甘くて酸っぱいピビムククスは韓国のファストフード
「明日、世界が終わるとしたら何食べる?」
誰しもこんなことを話題にしたことがあるのではないだろうか? 筆者も日本の友人たち数人に聞いたことがあるが、「おにぎり」とか「うどん」と答える人が多かった。寿司とか焼肉のようなごちそうを挙げる人がいないのは、深層心理に日常継続の渇望があるせいかも。麺は調理が簡単だからだろう。「そば」ではなく「うどん」なのは、腹持ちがよいからだろうか。生への執着の表れかもしれない。
ハルモニの「ピビムククスが食べたい」の言葉には多くの韓国人が笑い、共感したはずだ。
ピビムククス(ピビムミョン)は韓国式のファストフードだ。
素麺(ククス)を茹でてお湯から取り出し、どんぶりに入れる。そこに真っ赤なソースをかけ、よく混ぜて食べる。ソースは手作りする人もいるが、たいてい既製のピビムソースを使う。ゴマ油をひとたらしするとコクが出る。海苔、刻んだ玉子焼き、サンチュ……、トッピングはあり合わせのものでいい。
ピビムソースには、韓国人の舌が求めるすべてがある。色を見ればわかるように主原料は唐辛子。辛くないピビムククスはピビムククスではない。酢も使われているので酸味もある。辛いのに爽やかなのだ。砂糖も使われているので甘みもある。日本の知人から「旨い」の語源は「甘い」だと聞いたことがある。自分で書きながら口中が潤ってきてしまった。
韓国の即席麺マーケットはN社が大きなシェアをもっているが、ピビムククスの消費が増える夏場だけはP社のピビム麺やピビムソースが市場を席捲する。
日本にある韓国食材スーパーやネットショップなどでもピビムソースは買える。この夏は日本のみなさんにも韓国人の “終末フード” を体験してみてほしい。