ジナの青白い顔がゆっくりとだが生気を取り戻してゆく様子が本作の見せ場だ。ジナ役には、初期のパク・ヘイルにも通じる静謐な容貌のコン・スンヨン以外考えられない。そのたたずまいは、この女優はふだんでもこんな感じなのでは? と思わせる説得力があった。

 コン・スンヨンはこの主演作で2021年の青龍映画賞の新人女優賞を、映画は2022年の大阪アジアン映画祭で最優秀作品賞を獲得している。

韓国では手狭な集合住宅でも祭祀を行う。『おひとりさま族』でも主人公の隣人(ソ・ヒョヌ)が祭祀を行うシーンがあった

■公開間近の映画『ハンサムガイズ』で再び快活な女性を演じるコン・スンヨン

 演技力や経験値とは別に、この俳優にしかできそうにない役柄というものがある。俗に言うハマり役だ。そんな役に出合えるかどうかがその俳優の成否を決めるともいえる。

 コン・スンヨンは本作の3年前、Netflix『マイ・オンリー・ラブソング』に主演しているが、彼女が扮したスジョンは、『おひとりさま族』のジナとは似ても似つかない、多弁で向こうっ気の強い女性だった。

 コン・スンヨンのそんな演技は、6月末、韓国で公開されるコメディ・スリラー映画『ハンサムガイズ』でも観られる。この映画で彼女は、『ソウルの春』『KCIA 南山の部長たち』『財閥家の末息子』のイ・ソンミン。『犯罪都市4』『私たちのブルース』のパク・チファン。『バッドランド・ハンターズ』『KCIA 南山の部長たち』のイ・ヒジュン。『サムシクおじさん』『カジノ』のイ・ギュヒョンらと共演する。

 喜怒哀楽の激しいアクティブな役柄なので、『おひとりさま族』のジフとのギャップ萌えが楽しめるだろう。

●作品情報

『おひとりさま族』

[2021年/90分]監督:ホン・ソンウン

出演:コン・スンヨン、チョン・ダウン、ソ・ヒョヌ、キム・モボム、クム・ヘナ