■キム・ソンオが演じる悪役が完璧!

 対する闇金融組織のボスは、ウォンビン主演映画『アジョシ』の臓器売買組織の幹部役でトラウマ級のインパクトを残したキム・ソンオ。『ソウルの春』や『キル・ボクスン』にも出ている筋金入りのコワモテだ。

 粘着質な悪役というと、ソン・ジュンギ主演『財閥家の末息子』やソン・ガンホ主演『麻薬王』などに出たベテラン俳優ユン・ジェムン(1970年生まれ)を思い出すが、生来の悪人顔とねちっこい表情演技では今やキム・ソンオの右に出る者はいないだろう。ファン・ジョンミン主演映画『ベテラン』を観ればわかるように、アクション映画は悪役で決まると言われるが、百点満点の演技だ。

 本作はアクションシーンにも今までの犯罪ものでは見たことのないアイデアがちりばめられていて、それも見どころだ。

 主人公の妻の身を案じるマ・ドンソクの善玉演技と、観る者の憎悪をかきたてるキム・ソンオの悪役演技で、ハラハラドキドキが止まらないが、最後には最高のカタルシスが待っている。

 ちなみに、ラストシーンの警察の遅過ぎる登場に対してマ・ドンソクが見せる、安堵したような、あきれたような表情に、ブルース・リーの名作『燃えよドラゴン』の記憶を重ねたのは筆者だけではないはずだ。