Netflixで配信が始まるやいなや上位にランクインした韓国映画『無双の鉄拳』を観た。主演は我らがマブリーこと、マ・ドンソク。本作では魚市場で働く男を演じている。その弟分に、この4年後に『私たちのブルース』でも市場で働く男を演じたパク・ジファンと、『捜査班長1958』のキム・ミンジェ。敵役のヤクザに『模範家族』や映画『アジョシ』のキム・ソンオが扮する。
韓国で公開された2018年当時はノーマークだったが、これが、暑さが吹き飛ぶような爽快かつ痛快な映画だった。
■韓国映画の弱点だった娯楽作品を背負うマ・ドンソク
ハリウッドにシルベスター・スタローンやアーノルド・シュワルツネッガーがいるように、香港にブルース・リーやジャッキー・チェンがいるように、韓国にはマ・ドンソクがいる。韓国映画を30年以上観ているが、彼ほど怪力無双に特化した俳優を知らない。
韓国映画界は1990年代後半から、ノワール、ポリティカル・サスペンス(主に南北分断もの)、ラブストーリーなどの分野で海外でも評価される作品を多く生んだが、スカッとする娯楽映画となると、突き抜けた傑作は思い浮かばない。マ・ドンソクはそんな韓国映画の穴とでも言うべきジャンルを完璧に埋めた俳優だ。
『無双の鉄拳』は、主人公(マ・ドンソク)が闇金融組織に拉致された妻(ソン・ジヒョ)を救おうとする話で、いつもの怪力無双プラス、妻には頭が上がらない人間味のあるキャラクターが魅力だ。
この点は、マ・ドンソクの人気が爆発した映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』での夫婦関係(妻役はチョン・ユミ)に通じるものがある。
主人公は誠実な男だが、妻にいい暮らしをさせたいと思うあまり、商売で一発当てようという山っ気があり、そこが夫婦関係を不穏なものにしている。劇中のカニとウナギはそれを象徴するアイテムだ。
コミカルな弟分二人のうち、見ものは探偵を演じたキム・ミンジェ。マドロス、チンピラ、刑事、検事に大まじめに変装するバカバカしさは痛快だ。