「あっ、この俳優も、あの俳優も出てる!」と、公開から何年も経ってから見直したとき、ハッとする映画がある。その筆頭が、2012年に韓国で公開されて大ヒットしたクライム映画『悪いやつら』(ユン・ジョンビン監督)だ。

 チェ・ミンシク扮する主人公イクヒョン(公務員くずれのにわかヤクザ)と、ハ・ジョンウ扮するヒョンベ(筋金入りのヤクザ)の愛憎劇だが、今回は本作をきっかけに売れっ子になっていった助演俳優たちにフォーカスする。(記事全2回のうちの前編)

■『悪いやつら』主人公(チェ・ミンシク)と対立していたヤクザ役、チョ・ジヌン(1976年生まれ)

『悪いやつら』は、ついこのあいだまで敵対していた者どうしが急に親密になったと思ったら、再び憎み合ったりする人間模様が最大の見どころだ。「悪いやつら」は「懲りないやつら」なのである。

 そのなかでも主人公イクヒョン(チェ・ミンシク)とキム・パンホ(チョ・ジヌン)の関係がもっともえげつなく、それでいてどこか可笑しみがある。映画の前半、ののしり合っていた二人だが、後半、ヒョンベに愛想尽かしされ泣き崩れるイクヒョンをパンホが抱擁するシーンは、あまりの醜悪さに、逆に笑ってしまう。

 チョ・ジヌンの映画デビューはクォン・サンウ主演『マルチュク青春通り』だ。高校を恐怖支配する風紀委員長(イ・ジョンヒョク)の手下の一人にすぎなかったが、その威圧的な風貌は強く印象に残った。しかし、彼はそれだけでは終わらず、『国家代表!?』のスポーツ解説者役、『パーフェクト・ゲーム』の粗暴だが人間味のある一塁手役などで頭角を表し、『悪いやつら』で役者として開花。そこから出演作が急増し、2014年には『最後まで行く』『私たちは兄弟です/ウィ・アー・ブラザー!』で主役の座を射止めている。

 イ・ソンギュンとW主演を務めた『最後まで行く』では、百想芸術大賞の男性最優秀演技賞など多くの賞を受賞。イ・ジェフンキム・ヘス主演の大ヒットドラマ『シグナル』(2014年)の先輩刑事役でも第1回「アジアアーティストアワード」大賞などを受賞し、演技派俳優として地位を確立した。

 イ・ソンミン扮する田舎刑事の敵役を演じた『保安官』(2017年)では、表は善人、裏は悪人という難しい役をみごとにこなして見せた。また、ソル・ギョング扮する法律事務所代表のガラの悪い弟分を演じた『パーフェクト・バディ 最後の約束』(2019年)は、彼の人間味が最大限に発揮された名作である。

 7月末配信予定のドラマ『ノー・ウェイ・アウト:THE ROULETTE』でも、ユ・ジェミョンヨム・ジョンアとともに主役を演じている。この役には当初、『最後まで行く』で共演したイ・ソンギュンがキャスティングされ、クランクインを控えていたが、スキャンダルで降板。代わりにチョ・ジヌンが抜擢された。

■主人公の相棒(ハ・ジョンウ)の腹心役、キム・ソンギュン(1980年生まれ)

 キム・ソンギュンは、ドラマ『ムービング』『D.P.-脱走兵追跡官-』『離婚弁護士シン・ソンハン』など、多くの作品に脇役や準主役級で出演している演技派俳優だ。

 長らく舞台で活躍し、映画デビュー作『悪いやつら』でヤクザの親分ヒョンベ(ハ・ジョンウ)の腹心を演じ、本物かと思うほどの目力とサイドをのばした髪型で観る者を1980年代に引き戻してしまった。

『悪いやつら』の3年後には、『私たちは兄弟です』でチョ・ジヌンとともに事実上の主役を射止めている。さらに、『ソウル・バイブス』では、ムン・ソリ扮する裏社会のボスの腹心を演じた。