■主人公(チェ・ミンシク)の仇敵の検事役、クァク・ドウォン(1974年生まれ)

『悪いやつら』は犯罪組織側はもちろん、それを取り締まる権力側も負けずに「悪いやつら」だった。その筆頭が、盧泰愚(ノ・テウ)大統領が宣布した浄化作戦「犯罪との戦争(本作の原題)」を錦の御旗にイクヒョンやヒョンベ、パンホを追い詰める検事に扮したクァク・ドウォンだ。その立ち居振る舞い、メガネの奥で冷たく光るキツネ目、ぽっちゃり加減、話し方など、すべてが鼻につき、韓国映画史上に残る権力亡者を演じた。

 本作での経験は、その後、『弁護人』の警監役でも発揮された。ソン・ガンホ扮する人権弁護士との法廷での舌戦は、善玉を光らせるみごとな悪玉演技として語り継がれている。2015年の『哭声/コクソン』や2017年の『鋼鉄の雨』ではファン・ジョンミンチョン・ウソンと並び立つ事実上の主役をつかんでいる。2022年に飲酒運転で摘発され、活動自粛の状態にあるが、代役の見当たらない強い個性をもった俳優だけに復帰が待たれるところだ。

■主人公(チェ・ミンシク)の税関職員時代の同僚役、キム・ジョンス(1964年生まれ)

『悪いやつら』で端役ながらギラっと光って見せ、活躍の場を広げたのが、税関職員時代のイクヒョンの同僚に扮したキム・ジョンス(1964年生まれ)。押収した麻薬をヤクザに横流ししようとするイクヒョンを止めようとするも、結局押し切られてしまう小者の演技にはリアリティがあった。

 本作以降、映画出演頻度を高め、ソル・ギョング&イ・ソンギュン主演の『キングメーカー 大統領を作った男』で、先達のソン・ジェホ、チョ・ヨンジン、イ・ソンミンら大物俳優に続いて朴正煕(パク・チョンヒ)大統領を演じるまでに。

 また、日本で公開中のキム・ヘス、ヨム・ジョンア、チョ・インソン主演映画『密輸 1970』にも出演し、『悪いやつら』に続いて再び税関職員に扮している。(後編につづく)