ミステリー時代劇『青春ウォルダム~運命を乗り越えて~』は、史実に基づかない架空の物語設定であり、超優秀な世子が主人公になっている。特にパク・ヒョンシクが演じるイ・ファンは、読んだ文書の記述をすべて暗記してしまうという超人的な記憶力を持っている。これくらい優秀だと、やがて国王になった時にどれほど政治的に有能ぶりを発揮するのか、と大いなる期待を抱かせる。

 なお、本作は『青春ウォルダム 呪われた王宮』というタイトルで、NHK BSP4KとNHK BSで放送中である。(以下、一部ネタバレを含みます)

■パク・ヒョンシク主演『青春ウォルダム』終盤の見どころ考察

 優秀な世子が登場する架空の時代劇といえば、どうしても思い出してしまうのが『100日の郎君様』である。このドラマではド・ギョンスEXOD.O.)が頭脳明晰な世子イ・ユルを演じていた。

 しかし、悪徳高官に命を狙われてかろうじて暗殺を免れたのだが、記憶喪失に陥って農民のウォンドゥクに生まれ変わってしまう。そして、ナム・ジヒョンが演じるホンシムと100日間の夫婦生活を送っていくのだが、やがて記憶が戻って王宮に復帰し、悪徳高官と対決するという展開になっていた。

 主人公の世子がずば抜けて有能なこと、ルックスが抜群なこと、そして、悪徳高官と壮絶に対決していくというところが、『100日の郎君様』と『青春ウォルダム』はとてもよく似ている。

 ここで興味深いのは、『100日の郎君様』で強烈な悪徳高官に扮していた個性派俳優チョ・ソンハが、『青春ウォルダム』では一転して大変立派な高官を演じていることだ。

 とにかく、『100日の郎君様』のチョ・ソンハは極端に憎たらしくて悪役の典型的な存在に扮していただけに、『青春ウォルダム』で正反対の高官を演じていると「額面どおりに受け取っていいのか」と半信半疑になってしまう。いずれ恐ろしい悪役に転じるのではないか、と勘繰ってしまうほどだ。

 それくらいチョ・ソンハは『100日の郎君様』と『青春ウォルダム』でイメージをガラリと変えていた。

 そのチョ・ソンハに代わって『青春ウォルダム』で悪役を演じていたのがチョン・ウンインだ。彼が扮するチョ・ウォンボも本当に憎たらしい存在であり、このドラマの暗闇の部分を一手に引き受けていた。