猛暑の夏に開催されたパリ五輪。20個の金メダルを獲得した日本をはじめ、世界各国のアスリートたちの活躍が記憶に新しい。そんなオリンピックイヤーの晩夏にお勧めしたい韓国映画が、現在日本で公開中の『ボストン1947』だ。
戦争がスポーツの世界までをも支配していた時代があった。『ボストン1947』のベースとなった史実に驚きを隠せなかった。(以下、一部ネタバレを含みます)
■映画『ボストン1947』見どころ紹介!ハ・ジョンウ&イム・シワン主演、監督は『シュリ』のカン・ジェギュ
日本統治下の1936年、ベルリンオリンピックのマラソン競技で、日本代表選手が金メダルと銅メダルに輝いた。その2人の選手とは、韓国出身のソン・ギジョン(ハ・ジョンウ/『チェイサー』『神と共に』シリーズ)とナム・スンニョン(ペ・ソンウ)だ。
「日本人・孫基禎(そん きてい)」として金メダルを獲得したギジョンが達成した世界新記録は、あくまでも「日本の記録」としてオリンピック史上に刻まれている。
第2次世界大戦終結後、1947年に開催されるボストンオリンピックに祖国「韓国の記録」を刻むべく、ギジョンとスンニョンは、才能のある若手選手を発掘、育成しようとする。
2人の目に留まったのは、ギジョンに憧れ、自己流で走り続けてきたソ・ユンボク(イム・シワン/『ミセン-未生-』『非常宣言』)だ。
「韓国選手」としてオリンピックに出場するために、さまざまな関門が3人の前に立ちはだかる。それらの問題を解決しようと、懸命に努力する姿に胸が締め付けられる。日頃から韓国人は、人一倍愛国心が強いと感じているのだが、「韓国の記録」をオリンピック史上に残したいという3人の熱い思いが、ひしひしと伝わってくるのだ。
ユンボクを指導するギジョンはもちろん、タイムキーパーとしてユンボクとともにボストンの街を走る先輩ランナー、スンニョンの優しさが心に染みる。
ユンボクに扮したイム・シワンは、役作りのためにトレーニングや食事調整で、体脂肪率が6%になるまで減量したという。肉体だけでなく、顔つきさえも別人に見えるほどだったのは、並々ならぬ努力の表れだろう。
ユンボクを慕うオクリムには、人気演技派女優パク・ウンビン(『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』『無人島のディーバ』)が扮している。
メガホンを取ったのは、名作映画『ブラザーフッド』のカン・ジェギュ監督。同監督作品である『シュリ』が、9月13日からデジタルマスター版として日本で公開されるのも楽しみだ。