Netflixで配信中の『家いっぱいの愛』の鑑賞ポイントは、決別した家族の前に11年ぶりに姿を現した父ピョン・ムジン(チ・ジニ)の正体と、その娘ピョン・ミレ(ソン・ナウン)とナム・テピョン(ミンホSHINee)のロマンスの行方だ。

 物語も中盤にきて、父ムジンのエピソードはだいぶ明らかになってきたが、ミレとテピョンのロマンスはまだ安心して観ていられない状況だ。今回はミレとテピョンの距離が少し縮まった7話のシーンに着目してみよう。(以下、一部ネタバレを含みます)

■Netflix『家いっぱいの愛』ミレとテピョンの自転車練習風景

 父ムジンとの確執から何かとストレスを受けやすく、それを解消する方法を必要としているミレ。テピョンが教えたテコンドーの板割りもそのひとつだった。そして、7話でテピョンが新たにミレに教えたのが自転車の乗り方だ。

 ミレの「自転車に乗れない」というセリフに日本の視聴者は驚いたかもしれないが、韓国では自転車に乗れない、乗ったことのない人は珍しくない。50代以上の韓国人はとくにそうだ。

 坂が多いとか、舗装が雑だったとか、公共交通料金が安かったとか、労働者の乗り物というイメージが強かったからとか、自転車が普及しなかった理由はさまざまだ。日本や中国と比べると、韓国は明らかに自転車普及途上国である。

 テピョンがミレに、「子供のころに父親から習わなかった?」と聞いているのは、彼らが20代後半だからだろう。この20年間で我が国の自転車人口は急増し、今では自転車専用道路の整備も進み、日本の首都圏にある「ダイチャリ」のような自転車シェアサービスも普及しつつある。

ソウルではロードレーサー姿も珍しくなくなった。通勤通学に使う人も増えたが、自転車はまだレジャー・スポーツ用品のイメージが強い
ソウルの鐘路3街で見かけたシェアサイクル。最近は外国人旅行者も利用しているが、韓国の公道は自動車優先なので運転には注意が必要