Netflixドラマ『貞淑なお仕事』は、1992年の田舎町に住む4人の女性(キム・ソヨンキム・ソンリョンキム・ソニョンイ・セヒ)が、貧困脱出や自己実現のために成人用品(アダルトグッズ)の訪問販売に挑戦する話だ。

 しかし、今から30年以上前の韓国人、とくに女性の性意識は保守的で、主人公たちの事業は思うようにはいかない。(以下、一部ネタバレを含みます)

■30年以上前の田舎町を舞台にしたNetflix『貞淑なお仕事』、ヒロインが保守的な町の女性たち相手に見せた映画

『貞淑なお仕事』8話で、訪問販売の売り上げを伸ばすために、キム・ソヨン扮するジョンスクが考えたのが映画の無料鑑賞券の配布だ。

 選ばれた映画は成人用品の購買に結び付く娯楽映画。1980~1990年代前半にかけて、韓国で大きな話題となった『エマ婦人』だ。『エマ婦人』はエマ(愛麻)という語感からもわかるように、1970年代に世界中で話題となったフランス映画『エマニエル婦人』を連想させる映画だ。

 ドラマの8話に登場したのは第6作だが、第1作は1982年に公開され、30万人以上を動員。その年、もっとも多くの観客を集めた映画となり、主演のアン・ソヨンは百想芸術大賞の新人女優賞を獲っている。

 これは、2023年の大ヒット映画『ソウルの春』でファン・ジョンミンが扮したチョン・ドゥファン(劇中名チョン・ドゥグァン)大統領(在任期間1980~1988年)が、国民の目を政権批判からそらすための娯楽奨励策が成功した例だ。

 日本の人が初めて韓国映画にふれたのは、1988年のソウル五輪前後に日本のレンタルビデオショップに流入した作品が多かったと聞くが、あれも『エマ婦人』大ヒットの影響と無縁ではない。なかでもよく知られているのは、『涙の女王』で風格のある演技を見せたイ・ミスクの『桑の葉』、ナ・ヨンヒの『ソウル・コンパニオン』などだ。

忠清南道の瑞山(ソサン)で見かけた朽ちた映画館にかかっていた『エマ婦人』の看板。次回上映作は、『ロッキー3』