Netflixシリーズ『イカゲーム』シーズン2が昨年末に配信され世界的な大ヒットを続けている。
シーズン1が配信されたのは2021年9月。子どもの遊戯を取り入れた鮮烈な映像美と奇怪なストーリーで瞬く間に世界を席巻し、世界91カ国・地域で1位を獲得するなどNetflix史上最高の記録を達成した。
それから3年の時を経て配信されたシーズン2は、人間の本性をめぐる監督からの“問い”がさらに際立つ構図となっている。(※以下、一部ネタバレがあります)
■『イカゲーム』シーズン1最終話の第7ゲーム、超学歴主義を批判する「SKY」の文字に『SKYキャッスル』との共通点
『イカゲーム』シーズン1の続編となるシーズン2は、主人公のソン・ギフン(イ・ジョンジェ)が命をかけた危険なゲームで優勝してから3年後の世界が描かれている。ゲームに終止符を打つため再び参加を決めたギフンと、クセ者だらけの新参加者たちが血みどろのゲームに挑んだ。
シーズン2の配信が始まったことで、シーズン1を改めて見返す視聴者が続出している。あらすじを振り返ってみよう。
主人公のギフンは母親の銀行預金さえ盗み取る金欠の中年。妻と娘に逃げられ、母親に寄生して生きている。多額の借金を抱えるギフンはある日競馬で大穴を当てて大喜びするが、脱北女性に賞金をすられてしまう。すると、地下鉄の駅でスーツ姿の男(コン・ユ)に声をかけられ、めんこ遊びで現金を獲得した。
男は「◯△□」が描かれたカードを渡し立ち去る。ギフンはカードに書かれていた番号に電話し、一攫千金を狙ってイカゲームへの参加を決意。会場には緑色のジャージを着た参加者が集められており、運営側の覆面の人物が「6日間で6つのゲームにすべて勝利したら賞金456億ウォン(約50億円)を差し上げる」と呼びかけた――。
ギフンが貧しくなったのは会社をリストラされたからだ。このようにゲーム参加者の個人史や参加に至った事情が丹念に描かれるなか、人間の欲と愛の二項対立が際立っていく。それが典型的に表れたのは、シーズン1の最終話となる第9話だ。
「001番」としてゲームに参加したゲーム支配人の老人オ・イルナムは、ゲームで生き残り大金を獲得したはずなのにすっかり抜け殻のようになってしまったギフンを高層ビルの7階に呼ぶ。
クリスマスイブの12月24日、時計は午後11時30分。冷たい雪が降り積もる中、道路に倒れていたホームレスをめぐって「001番」のオ・イルナムと「456番」のギフンは7番目のゲームを行う。イルナムは「救う人間などいない」、ギフンは「救う人間が現れる」と予想。勝ったのはギフンだったが、イルナムはベッドの上ですでに息を引き取っていた。
シーズン1で登場したゲームは、順に(1)ムクゲの花が咲きました、(2)型抜き、(3)綱引き、(4)ビー玉遊び、(5)飛び石渡り、(6)イカゲーム。最後の対決はこれらに続く7番目のゲームとして位置付けられていた。
ギフンが訪れた高層ビルの名前は「SKYビル」。韓国の超学歴社会を象徴するソウル大(S)、高麗(コリョ)大(K)、延世(ヨンセ)大(Y)の頭文字を合わせた「SKY」と同じだ。ヒットドラマ『SKYキャッスル~上流階級の妻たち~』のように、韓国の超学歴社会への批判が込められているようだ。
シーズン2は、元IZ*ONEのチョ・ユリ、『ミセンー未生―』(2014年)のイム・シワン、『ザ・グローリー 〜輝かしき復讐〜』(2022年)での悪役で知られるパク・ソンフン、元BIGBANGのT.O.P、『梨泰院クラス』でいじめられる高校生を演じたイ・ダウィら、豪華ゲストを多数集めたことでも話題になっているが、立場が異なる人間同士の対立構造は数倍もエスカレートし、はっきりと2分割される。