■血液型ブームだった2000年代、なぜかB型男子が……
先日、あるYouTubeチャンネルに、イ・ヨンエがゲストとして出演していた。楽しそうに家族の話しをするなか、彼女が「夫は“A”だから心配性なの」と口にした瞬間、ホストの目が点になった。最近は血液型の話しをしても、どうやら通じないらしい。
イ・ヨンエがドラマ『宮廷女官チャングムの誓い』の主演をつとめていた2000年代初め、韓国は血液型ブームにわいていた。メディアではさかんに血液型の話題を取り上げていたし、私が通っていた語学学校でも血液型をテーマにした授業が行われていた。
「O型の人はおだやかで社交的です」
「A型の人は繊細で礼儀正しいです」
「AB型の人は神秘的で芸術家タイプです」
「B型の人は気難しくて、自己中心的です」
教科書では、なぜかB型だけが酷い書かれ方をしていた。こんな韓国語、実生活で役に立つわけがない。そう思っていたら、韓国人ばかりの飲み会に参加してみると、話題はまさかの血液型。やはりB型は酷評されていた。別の飲み会では「血液型は?」と聞かれたので「O型」だと伝えたら、「おめでとう、それはよかったね」と、不思議な返答がきたりもした。
ちょうどこの頃、『B型男子との恋愛』というB型男子のトリセツ本が出版され、話題になった。また、『B型の男』という歌がチャート1位を記録したり、映画『B型の彼氏』が大ヒットしたりと、B型男子への関心がものすごい勢いで高まっていた。否定的な意味でだが……。
『B型男子との恋愛』では、B型男子のことを「自信過剰で、気まぐれ、怒りっぽい」と、散々のこき下ろしよう。あげく「彼の血液型がB型かどうかは重要ではありません。女性を苦しめる彼のB型的性格、それこそが問題なのです」と書かれていて、衝撃を受けた。B型男子をタイトルに掲げているのに、血液型が問題ではないらしい……。
それからほどなくして、血液型には科学的根拠がないとの認識が広がり、ブームは去っていった。
2000年代初めの韓国は、今よりもずっと伝統的なジェンダー観が色濃く残っていた。メディアがB型男子を自由奔放な存在として描いたことで、理想の男性像とのギャップが際立ち、B型男子への手厳しい評価につながったと、今になっては言われている。
科学的根拠のない血液型性格診断、そしてメディアが作り上げたB型像で、肩身の狭い思いをした人はきっと大勢いただろう。
血液型と同じく、MBTIも科学的根拠は乏しいとされている。ただ、血液型と違って、MBTIは環境や心理状態、人生経験によって、その結果が変動するのはなんだかホッとする。
とはいえ、MBTIも扱い方を間違えると、第二のB型男子を生むツールになりかねない。会話のきっかけや自分や他者を知る手がかりとして用いるくらいがちょうどいいのかもしれない。私はもっぱら、誰かがアップしてくれたドラマMBTI考察を眺めて楽しむ側だけれど。