「キム先生は“F”じゃないわね。“T”だわ、間違いない」

 Netflix人気ドラマ『いつかは賢いレジデント生活』2話でのこと。患者の気持ちを汲まず、論理ばかり優先するレジデント1年生のサビ(ハン・イェジ)に向けて、指導医師が放った言葉だ。

 ここ数年、韓国ではドラマ、バラエティ番組、SNSなどで、「T」や「E」、「I」といったアルファベットが頻繁に登場するようになった。これらはすべて「MBTI」の指標だ。

■韓国でブームの性格診断「MBTI」、ドラマ登場人物のMBTI考察も盛ん!

 MBTIは、心理学者ユングのタイプ論をベースに、1940年代にアメリカで開発された性格診断ツール。

 公式テストなら93問、簡易テストの場合は20〜60の質問に答えると、4つの指標(〈1〉外向型(E)or 内向型(I) 、〈2〉感覚型(S)or 直観型(N)、〈3〉思考型(T)or 感情型(F)、〈4〉判断型(J)or 知覚型(P))からなる、「ESTJ」や「INFP」といった性格タイプが導き出される。

 MBTIが韓国に入ってきたのは1990年代と言われているが、広く知られるようになったのは2020年頃。あるバラエティ番組で取り上げられたのがきっかけとなり、MZ世代を中心に一気に浸透した。自己紹介や初対面の人とのアイスブレイクに、MBTIを使うと、共通点が見出せたり、話しが弾んだりしていいのだという。

 近年は、トーク番組で司会者が「MBTIは?」とゲストに尋ね、そこから話しを広げていく場面もよく見かける。また、社交的な人を「Eっぽいよね」と言ったり、冒頭のサビのような人に「もしかしてT?」と尋ねたり、特定の指標を話題にすることも。

 ドラマの登場人物のMBTIを考察して楽しむことはもはや文化として定着した。ドラマが中盤にさしかかり、盛り上がってくると、ネット上ではMBTIをもとに行動や心理を予測する人であふれかえる。

 このように、メディアや日常でアルファベットが飛び交うので、MZとはかけ離れた世代の私もなんとなくは理解できるようになってきた。でも、どちらかというと、なじみがあるのは“A”や“B”のほうだ。そう、今や誰からも尋ねられなくなった血液型。