冬のソナタ』は、韓国の公共放送のKBSで2002年1月14日から3月19日まで全20話で放送された。この作品はペ・ヨンジュンチェ・ジウが主演し、韓国だけでなくアジア各地域でも絶大な人気を得た。その結果、韓国ドラマがグローバルに展開される契機をもたらしている。それほど影響が大きかったのだ。

 そこで、『冬のソナタ』以降の韓国ドラマの制作過程の変遷を、時系列に沿って振り返ってみよう。

■韓国ドラマの金字塔、『冬のソナタ』が及ぼした影響力とは?

『冬のソナタ』が放送されていた2002年当時、韓国にはコンテンツ制作会社を積極的に育てようという政策があった。テレビ局が自社制作するだけでなく外部に発注することで、コンテンツの多様性を広げるという試みだ。

 具体的に言うと、地上波のテレビ局で放送される番組のうち35%は制作会社に任せなければならなかった。テレビ局は1年間の編成計画を立てて外注枠を決め、そこで外部の制作会社同士がコンペで競うのだ。そのコンペで最高の企画を提案した会社にドラマが発注される。『冬のソナタ』もそうしたコンペを通して実現したドラマである。

 そのコンペに勝って制作を請け負ったのがパン・エンターテインメントだ。2004年1月に、筆者は同社の企画室課長で『冬のソナタ』を担当したチョ・ソンウ氏にインタビューをした。

『冬のソナタ』は初回の放送でいきなり18%の視聴率を挙げ、KBSのホームページに1000万件のアクセスが殺到してサーバーがダウンしたという。その凄まじい人気ぶりについて、チョ・ソンウ氏は次のように説明してくれた。

ユン・ソクホ監督の前作の『秋の童話』が大成功していたことが大きかったのです。それによって『冬のソナタ』への期待感が高まっていました。さらに、肝心だったのが宣伝です。既存のドラマとは一線を画す大規模な宣伝や広報を通じて、まずは『冬のソナタ』を認知してもらえるように努めました」

 一般的に、韓国のドラマ1話分の制作費はおよそ1億ウォン(当時のレートでは約1千万円)。20話完結で20億ウォンとされていた。それがテレビ各社から制作会社に与えられる予算になるが、パン・エンターテインメントはOST戦略に長けていて、さらなる収入を得るノウハウがあったという。

「通常のドラマ以上に宣伝に巨額の費用を掛けました。具体的には新聞広告、地下鉄広告、街頭看板、インターネット広告などに映画並みのPR活動を行いました。さらに、『冬のソナタ』は内容も優れていました。

 特に、ユン・ソクホ監督ほど、ドラマにおける音楽の役割を熟知した演出家も他にいないほどです。『秋の童話』もそうでしたが、映像と音楽がお互いに調和することで相乗効果が得られるとユン・ソクホ監督は確信していました。そこで、『冬のソナタ』でも映像と音楽の融合にとても力を入れました」

 結果的に、『冬のソナタ』は台湾や香港などのアジア各地域でも放送されて大ブームを巻き起こした。実は、『秋の童話』で韓国ドラマの面白さを知ったアジア各地域のテレビ局が、こぞって『冬のソナタ』の放送権を買い取っていたのだ。

『冬のソナタ』ロケ地南怡島にあるカフェの店内には、ドラマ撮影時の写真が飾られていた