IRIS-アイリス-』は、韓国ドラマ史上でとてつもないスケールの作品だった。韓国KBSで2009年10月から12月まで全20話で放送されたが、オンエアされるとメディアの評価が非常に高く、「今までの韓国ドラマの枠を越えた」という見出しがスポーツ新聞の芸能欄を飾っていた。視聴率も初回から25%近くを記録し、以後もグングン上がって最終的には39.9%まで上昇した。

■従来の韓国ドラマの概念をすっかり変えた『『IRIS-アイリス-』、イ・ビョンホンキム・テヒほか、豪華出演陣!

『IRIS』が最高の人気を獲得したのも、従来の韓国ドラマの概念をすっかり変えたからだ。制作費は史上最高規模の200億ウォン(当時のレートで約16億円)。集結した出演陣は、イ・ビョンホン、キム・テヒ、チョン・ジュノ、キム・スンウなど。まさに主役級のトップ俳優が一堂に揃っていた。

 何よりも、白熱したアクションシーンに度肝を抜かれた。テレビドラマでは考えられないほど迫力あるシーンが目白押しだった。

 さらに話題になったのが海外ロケの豪華さ。秋田、ハンガリー、上海でロケが行われたが、各地での映像の美しさが見事だった。たとえば、秋田は雪の抒情的な風景、ハンガリーはヨーロッパ的な街並みの美しさ、上海は発展を続ける最新の高層ビル……世界各地の特色が鮮烈に描きだされていた。

 そんな映像の中で展開されるドラマのタイトルに入っている「IRIS」とは、謎のテロ組織のこと。物語は、この組織の実体が謎に包まれたまま進行していく。

 イ・ビョンホンが演じるキム・ヒョンジュンは特殊部隊の訓練生。大学で頭脳明晰な美女を見そめ、酒場に誘い出すが、酒の飲み比べでヒョンジュンが先に酔いつぶれるほど相手が酒豪だった。その美女こそキム・テヒが演じるスンヒで、彼女はNSS(国家保安局)の優秀なチーム長だった。

 特殊部隊でも特待生のヒョンジュンは、親友のサウ(チョン・ジュノ)と一緒にNSSにスカウトされ、2人はスンヒの部下として対テロ班で活躍することになる……。

 とにかく、先がまったく読めないほどの面白さに心からワクワクした。

 また、ラブロマンスもドラマを華やかに彩っていて、ヒョンジュンとスンヒが過ごす「秋田の日々」がとても印象的だった。

 そこは、2人が重要な手柄を挙げた褒美として特別休暇をもらって訪れた場所で、愛しあうカップルが日本の混浴に戸惑いながらも温泉につかり、スキーを楽しみ、居酒屋で思い出を作る。そうした抒情的なシーンがまぶしかった。

『IRIS』ロケ地になった乳頭温泉郷の「鶴の湯温泉」