■日本で撮影されたシーンで感じる時代の変化
『隠し味にはロマンス』6~7話を見ていて思ったのは、時代は変わったのだなあということ。そのひとつは商標権への配慮だ。6話の後半にはすすきの交差点が映る。札幌の街を象徴するNIKKAの巨大看板は「SIKKA」になっていて、ヒゲのおじさんはいかめしさのない平板な顔にアレンジ。東横インは「北横イン」に、SUPER DRYは「SUPER TRY」になっていた。
1990年代、ソウルの劇場で観た映画の背景音楽には当時ヒットした洋楽が使われていたが、後日DVDで見直すと別の曲に変わっていたりしたものだ。そんな韓国も今やエンタテインメントのライツ大国。著作権にも商標権にも無頓着な時代からは隔世の感がある。
もうひとつは、日本の飲食店の内装の再現性の高さだ。6話の後半には、ヨンジュとボム(カン・ハヌル)とミン(ユ・ヨンソク)が居酒屋のカウンターでハイボールを飲むシーンがあった。屋外ロケでは札幌の本物の市場などを映していたのだから、居酒屋も実在する店を使ってほしかったが、これは韓国のスタジオで組んだセットだろう。
セットだとしても、よくできていたほうだ。カウンターの内側から横並びの三人を捉えた映像は、メニューの札の不自然さ、値段が書いていない点など違和感があったが、その数秒前、ボム側から三人を捉えた映像は日本に住む者の目にも本物と映ったかもしれない。
ありのままに映す。日韓ともにそんな意識が強まれば、文化交流の相互理解はさらに進むだろう。

●配信情報
Netflixシリーズ『隠し味にはロマンス』独占配信中
[2025年/全10話]演出:パク・ダンヒ『弱いヒーロー Class1』(共同演出) 脚本:チョン・スユン『少年飛行』 クリエイター:ハン・ジュンヒ『D.P. -脱走兵追跡官-』シリーズ(演出・脚本)、『弱いヒーロー』シリーズ(クリエイター)
出演:カン・ハヌル『椿の花咲く頃』、コ・ミンシ『誰もいない森の奥で木は音もなく倒れる』『五月の青春』、キム・シンロク『地獄が呼んでいる』シリーズ、ユ・スビン『愛の不時着』『弱いヒーロー Class2』、ペ・ナラ『D.P. -脱走兵追跡官-』シーズン2、ホン・ファヨン『埋もれた心』、ペ・ユラム、オ・ミネ