高句麗王コ・ナンム(チ・チャンウク)の死を発端とする王妃ウ・ヒ(チョン・ジョンソ)の、生き残りをかけた緊迫の24時間を描くサスペンスアクション『于氏王后(うしおうこう)』。ナンムは殺されたのか? なぜウ・ヒの命が狙われるのか。それは、高句麗を構成する部族たちの歴史とその力関係にほかならない。
■チ・チャンウク出演時代劇『于氏王后』高句麗王コ・ナンムは暗殺された? 次の王位、権力を虎視淡々と狙う北部と、西部、そして卒本の人々とは
部族のゆるやかな連合体だった高句麗は、有力部族が集う諸加〈チェガ〉会議が大きな力をもっていた。だが、6代・太祖大王のころから王家であるコ氏が主導権を握るようになっていく。次男でありながら王位についた9代・故国川〈コグクチョン〉王コ・ナンムは戦にめっぽう強く、領土回復や征服を重ねる一方、外戚として権勢をふるっていた一部の部族首長を粛清。さらに、それまで有力部族から選ばれていた国相(宰相)に、農民のウル・パソを起用するなど、貴族たちを牽制し、王権の強化を図っていた。
それに反発していたのが、北部(王妃族)のミョンニム氏、西部有力部族のヘ氏だ。
■高句麗を構成する五大部族
あらためて劇中の部族をみてみよう。
主人公ウ・ヒをはじめ、代々、王妃を輩出してきた部族。絶奴部〈チョルノブ〉と記されることの多く、後部、黒部とも呼ばれているのが北部(王妃族)だ。
廃太子(第1王子)コ・ペウィの妃はミョンニム氏、第3王子コ・バルギの妃はチャ氏。第4王子コ・ヨヌの妃がオ氏、第5王子コ・ゲスの妃にはヨン氏と、北部を形成するそれぞれの家が、娘を王家に嫁がせている。世継ぎがいないことを理由にウ・ヒを廃位させ、「次の王妃は我が家門から」と目論むのはもちろん、かつて首長を粛清されたチャ氏、オ氏の首長はコ氏への不満も抱えている。
国政を口実に王権奪取を狙うヘ・デブがいる西部は、消奴部〈ソノブ〉、右部、白部とも呼ばれるところだ。コ氏から王が出る以前(6代から中部出身だと考えられている)は、この地を治めるへ氏から王を輩出していたため、首長同士のなかでもその地位は高く、力のある部族。再び王を自分のもとから出すため、ナンムの命を狙っていたとしてもなんら不思議ではない。
さらに、大祭司による妖しい祈祷シーンが印象的な東部(左部、青部、順奴部〈スンノブ〉)、鉄騎軍をもつが、もともとの祖先が違うために高句麗内での地位が低い南部(前部、赤部、灌奴部〈クァンノブ〉)、そして、王家コ氏の中部(内部、黄部、桂婁部〈ケルブ〉)、この5つの部族が、おのおの権力を求め、策をめぐらしている状態だ。
そんな5つの部族が集う諸加会議で、横柄な態度の首長を一蹴するウ・ヒの姿があった。苦虫を潰したような表情の北部・西部の首長が描かれており、力関係の一端が見えるのだが、この会議のシーン、北部は黒、西部は白、東部は青、南部は赤、そして、中部は茶の衣を身に纏っている。興味深い演出だ。
