人生の終盤を迎えた親友同士が故郷の村で過ごす穏やかな時間――。
『おつかれさま』のナ・ムニ、『イカゲーム』のキム・ヨンオク、『旋風』などのパク・クニョンといった韓国を代表するベテラン俳優たちの共演で見せる映画『最後のピクニック』。高齢者をとりまく様々な困難や家族たちの事情を織り込みながら綴られる静かなストーリーには、韓国でも多くの人たちが共感を寄せ、ミニシアター作品としては異例のヒットとなった。俳優たちの見事な演技を引き出しながら本作を完成させたキム・ヨンギュン監督に話を聞いた。(インタビュー記事全2回のうち前編)
■企画を気に入ったナ・ムニ自身が親友キム・ヨンオクを誘って映画化が実現した『最後のピクニック』
――見終わった後にいろいろなことを考えさせられる作品でした。映画の出発点から教えてください。
「少し特別なケースなのですが、最初にナ・ムニさんがこの物語の原型と出会ってとても共感し、長年の友人であるキム・ヨンオクさんに『一緒にやろう』と声をかけたところから始まったプロジェクトです。ですから、ナ・ムニさんはこの映画に対して特別な愛情を持っているんです」
――60年ぶりに故郷に戻り、初恋相手や忘れていた過去を向き合うことになるウンシム役をナ・ムニさんに、彼女の親友であり世話好きのグムスン役をキム・ヨンオクさんにお願いしたのはなぜですか?
「ナ・ムニさんは『どんな役でもいいから、必ず作ってほしい』とおっしゃっていました。当初、キム・ヨンオクさんがウンシムのほうが面白そうなキャラクターですね』と言われたんですが、監督としてはグムスン役のほうがよいと思い、そのようにお伝えして納得していただきました」
――この作品には、現在、韓国の高齢者が置かれている深刻な状況もかなり赤裸々に描かれています。映画化するにあたって、リアリティとフィクションのバランスをとるのが難しかったのではないでしょうか。
「心がけたのは“自然に見えること”でした。空間も音楽も衣装も美術も、そうした基準で選びました。そして、もっとも重要なのが自然な演技でした。これは私の努力や能力というよりも、80代のキャラクターの人生を実際に80代の俳優が演じるという特別な状況を、俳優のみなさん自身が心から望み、とても楽しく演じている様子が自然に表現されたのではないかと思っています」
