チョ・ジョンソク、イ・ソンギュン、ユ・ジェミョンと3人の名優が共演する映画『大統領暗殺裁判 16日間の真実』が日本で公開中だ。
本作同様、1979年10月26日に発生したパク・ジョンヒ大統領暗殺事件を扱った『KCIA 南山の部長たち』では、暗殺事件の首謀者、韓国中央情報部(KCIA)のキム部長に焦点をあてた。一方、『大統領暗殺裁判 16日間の真実』は、キム部長の命令を受けて暗殺事件に加担した唯一の軍人がいたという、韓国でもあまり知られていない史実を、『王になった男』のチュ・チャンミン監督がフィクションを交えながら、不当な裁判の様子を中心に描いた作品だ。
その軍人を演じたのは、『パラサイト 半地下の家族』や『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』などの名演技で知られる故イ・ソンギュンである。本作は彼の遺作でもある。(以下、一部ネタバレを含みます)
■チョ・ジョンソク、イ・ソンギュン共演『大統領暗殺裁判 16日間の真実』見どころ
韓国中央情報部長のキム・ヨンイル(ユ・ソンジュ/『その電話が鳴るとき』『消防士』)は、時の大統領暗殺を計画。彼の随行秘書官であるパク・テジュ(イ・ソンギュン)は、上官の命令に従い、暗殺事件に加担したことで、他の被告人たちとともに裁判にかけられる。
すぐに弁護団が結成されるが、被告人のなかで唯一、軍人であるテジュには、三審制ではなく単審制で判決がくだされるため、勝てる見込みがないことから弁護を名乗り出るものがいない。
弁護団は、法廷闘争の第一人者であるチョン·インフ(チョ・ジョンソク/『賢い医師生活』シリーズ、『EXIT』)に白羽の矢を立てる。上官の命令には絶対服従と考える軍人テジュの頑なさに加え、テジュに不利な状況が重なり、インフは彼を救う手立てを見つけられず苦戦する。諦めの境地にいるテジュが、妻や子供たちのことを考える束の間の時間に見せる表情が、どうしてもイ・ソンギュン自身と重なってしまい、見ていてつらくなる。
また、本事件の合同捜査団長を務めるチョン・サンドゥ(ユ・ジェミョン/『劇映画 孤独のグルメ』『ハルビン』『梨泰院クラス』)が公判を盗聴し、たびたびメモを送っては裁判の主導を握るという不正を行う。
そんな中、ようやく大物がテジュを救うために証言台に立つことになった。その矢先、『ソウルの春』で描かれた「12.12軍事反乱」と呼ばれるクーデターへとストーリーが展開していく。
最初は金儲けと名声のために弁護を引き受けたインフだったが、テジュの真面目でつましい生活ぶりを知り、なんとかテジュを救うための糸口を見つけようと奔走するインフ。チョ・ジョンソクの文字通り体当たりの演技に、胸を締め付けられる。
相反するのが、チョン・サンドゥだ。独裁者の座を狙い、クーデターを起こした全斗煥(チョン・ドファン)がモデルとなった人物だ。カメレオン俳優の異名をとるユ・ジェミョンが、早口でまくし立て、相手に有無をいわさぬ威圧感を与え、徹底的な「悪」に徹する。
テジュやインフにとっての「幸せの国」(本作の原題)は、果たしてどこにあるのだろうか。『ソウルの春』へと続く結末に、目が離せなくなる。

●作品情報
『大統領暗殺裁判 16日間の真実』全国公開中
[2024年/124分]監督:チュ・チャンミン 脚本:ホ・ジュンソク
出演:チョ・ジョンソク、イ・ソンギュン、ユ・ジェミョン
配給:ショウゲート
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