ディズニープラス初のオリジナル韓国時代劇シリーズ『濁流』。ロウンが演じるチャン・シユルは、利権の巣窟となった船着場・麻浦(マポ)でならず者たちに交って餓死寸前の状態になっていた。それでも自尊心を失わず、不当な扱いに負けず懸命に生きていた。(以下、一部ネタバレを含みます)
■ロウン主演、ディズニープラス韓国時代劇『濁流』見どころは?
濁流の元になる激しい雨が終日降り続くようなドラマだ。人間の尊厳とは何なのか。その根本の生き方を問い続ける作品ともなっている。
舞台は朝鮮王朝時代に物流の拠点になっていた麻浦。ここは、不正そのものが力の源泉になっていた無法地帯だ。そんな中で搾取され続けていたのが、物資を背負って運ぶ労務者たちだった。その中に、190センチの長身でひときわ目立つ若者がいた。髭面に精悍な表情が宿るチャン・シユル(ロウン)だ。
彼は厳しい労働に耐えながら、その日のわずかな穀物を得ていた。しかし、それすらも奪われる日常でもあった。原因はわかっていた。労賃をむしりとる元締めと不正な蓄財を続ける悪徳官僚のせいだ。労務者を人間扱いしない彼らが、麻浦を情のない無法地帯に貶めていたのである。
じっと耐え忍ぶシユル。『濁流』の序盤では彼の素性がまだ明かされない。しかし、何も語らずともこの男の人生にただならぬ過去があることを、ドラマが小さな伏線を集めて物語っていた。
そして、第2話の終わりになって珠玉の名場面が登場する。捕盗庁(ポドチョン/罪人を捕らえる官庁)の従事官としてチョン・チョン(パク・ソハム)が赴任してきたのだ。彼と目が合ったシユルは、万感の思いを込めて抱き合う。それは、シユルの過去が視聴者に明かされる契機となった。
第3話では、シユルの壮絶な生い立ちが描かれる。科挙を受けて国を守る武官になることが夢だったシユルは、祖母が再婚したという理由だけで科挙の受験資格を失う。役所に善処を願い出たが、虫けらのように扱われた。その末に放火犯となって逃亡する身の上になったのだ。その際に助けてくれたのが、兄弟のように育ったチョンであった。
それから9年後、2人はまったく別の境遇のもとで再会した。チョンは科挙に受かり、優秀な官僚となっていた。しかし、彼は麻浦の役所が賄賂と職務怠慢で汚染されていることに愕然とする。彼は一つずつ不正をただす覚悟で臨むが、腐りきった官僚たちの中で孤立無援になってしまう。
